【半導体】東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、ディスコの決算を分析します。

決算

テクニカルアナリストの向川です。

今回の決算分析シリーズも第3弾。ここまで電線3社(フジクラ・古河電工・住友電工)では「個社で明暗が分かれた決算」を見ました。3メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)では「業界全体が押し上げられた決算」を見ました。

今回は、半導体製造装置の主要4社、東京エレクトロン・アドバンテスト・ディスコ・レーザーテックを取り上げます。

結論から言うと、この4社は「同じセクターなのに、決算の姿がここまで違うのか」と驚かされる内容でした。AI需要という共通の追い風がある中で、今後の動きにも注目です。

1. まず4社の実績を並べる

26年通期決算の数字を並べます。レーザーテックだけ6月期決算なので第3四半期累計の数字ですが、全体像は十分に見えます。

銘柄売上高営業利益配当
東京エレクトロン(8035)2兆4,435億円(+0.5%)6,249億円(△10.4%592→628円
アドバンテスト(6857)1兆1,286億円(+44.7%4,991億円(+118.8%39→59円
ディスコ(6146)4,369億円(+11.1%)1,850億円(+10.9%)413→505円
レーザーテック(6920)※3Q累計1,695億円(+0.4%)782億円(△1.4%)通期329円維持

ぱっと見て、すぐに気がつくと思います。

アドバンテストの営業利益+118.8%は、4社の中で圧倒的です。半導体だけでなく、私がこれまで取り上げた電線3社・メガバンク3社を含めても、最も高い伸び率です。

一方の東京エレクトロンは、業界の盟主でありながら営業利益は10.4%減益。売上もほぼ横ばいでした。

ディスコは安定して6期連続の過去最高益。レーザーテックは現状維持に近い水準。

4社とも「半導体製造装置」というくくりで語られることが多いのに、利益の伸び方は4社4様、まったく違う姿になっています。

2. なぜここまで差が出るのか

同じセクターなのに、なぜここまで差が出るのか。

答えは「半導体製造装置」と一言で言っても、各社が作っている装置の役割がまったく違うからです。

アドバンテストは「検査」の会社

アドバンテストは半導体テスターを作る会社です。完成した半導体チップが、設計通りに動くかを確認する装置です。世界シェアは約58%で、競合の米テラダインを大きく引き離す圧倒的なポジション。

ここがポイントなのですが、AI向け半導体(NVIDIAのGPUや、それに付随するHBMメモリなど)は、回路が複雑になればなるほど検査コストが膨らみます。一個の半導体を検査するのに必要な時間が、世代を重ねるごとに伸びている。だから、AI半導体の数量が伸びるよりも速いペースで、テスター需要は伸びていくという構造があります。

これがアドバンテストの+118.8%という数字の正体です。AI需要から市場全体の伸びを超える成長ができる。

東京エレクトロンは「製造」のキング

東京エレクトロンは、半導体を作る工程そのものの装置を作っています。露光、エッチング、洗浄など、製造ライン全般をカバーする「総合メーカー」です。日本の半導体製造装置業界の盟主と呼ばれる存在です。

ところが今期、売上はほぼ横ばい、営業利益は減益でした。

これには事情があります。半導体製造装置の市場は、メモリ(DRAM・NAND)の需要サイクルに大きく左右されます。ここ数年、メモリ市場が低迷していたことが響きました。一方で、AI向け先端ロジック(NVIDIAのGPUを作るためのTSMCの装置投資など)は順調に伸びている。この二つが相殺された結果、全体としては横ばい、という着地になっています。

ただし、東京エレクトロンが弱気というわけではありません。27年3月期の中間期予想として、営業利益+42.2%という強気の数字を出してきました。来期からAI需要が本格的に効いてくる、というメッセージです。

ディスコは「加工」のニッチ王者

ディスコはウェハの切断・研削など、半導体製造の後工程で使われる精密加工装置の世界シェアトップです。

営業利益率42.3%という驚異的な高収益で、6期連続の過去最高益を更新しました。

ディスコの強みは「特定の工程で圧倒的シェアを持ち、競合がほぼいない」点です。これにより価格決定力が極めて強く、利益率が高い。AI需要の追い風はもちろん効いていますが、ディスコの場合は「もともと強い構造に追い風が吹いた」という形です。

レーザーテックは「検査」のもうひとつの王者

レーザーテックは、半導体製造で使われる「マスク」と呼ばれる原版を検査する装置で、世界シェアほぼ100%という独占的な地位を持っています。特に最先端のEUV露光用マスク検査では競合がいない。

ただし今期は売上ほぼ横ばい、営業利益はわずかな減益。レーザーテックの特徴は「装置が1台数十億円と非常に高額で、出荷タイミングによって四半期業績が大きくぶれる」点です。

年単位で見ると成長しているけど、四半期単位ではガタガタになりやすい。これは構造的なものなので、短期業績ではなく長期トレンドで見るべき銘柄です。

3. 来期予想で見えてくる「半導体らしさ」

決算で大事なのは実績だけではなく、来期予想です。ここに半導体セクターの面白い特徴が表れています。

銘柄27年予想
アドバンテスト売上+25.8%、営業益+25.7%
東京エレクトロン通期予想を出さず、中間期のみ(営業益+42.2%)
ディスコ通期予想を出さず、1Qのみ(営業益+21.8%)
レーザーテック通期予想変更なし(営業益+18.6%)

注目してほしいのは、東京エレクトロンとディスコが「通期予想を出していない」という点です。

これは決して悪い意味ではありません。半導体業界は、顧客(半導体メーカー)の設備投資の意思決定によって業績が大きく振れます。「向こう1年の数字を確約できるほどの確度が、現時点ではない」というのが企業側の認識です。

特にAI向け半導体需要は過去にないほど急拡大しているため、生産能力をどこまで増やせるか、顧客がどのタイミングでどれだけ発注するか予測しにくい。だから半年に一度、状況を見ながら数字を出していく、というスタンスを取っています。

これは電線3社やメガバンクとは全然違う、半導体ならではの特徴です。電線3社ではフジクラが「保守的に通期予想を出した」ことで売られましたが、半導体の場合は「そもそも通期予想を出さない」という選択もある。業界によって決算の出し方そのものが違ってくる、ということです。

4. 4社のポジションを整理する

決算と事業構造を踏まえて、4社のポジションを整理します。

アドバンテスト:AI需要の最大恩恵者

世界シェア58%の半導体テスター。AI半導体の複雑化が、そのままアドバンテストの収益拡大に直結する。営業利益+118%は、AI関連銘柄全体の中でも頭ひとつ抜けた数字です。

ただし注意点もあります。株価は過去1年で大きく上昇しており、織り込み度はかなり高い水準。電線3社で言えば「フジクラに近いポジション」になりつつあります。今後の決算で期待を下回ると、大きく振れる可能性は意識しておきたい。

東京エレクトロン:盟主の真価が問われる局面

業界の盟主でありながら、今期は減益。一見ネガティブですが、来期中間予想で+42%を出してきたところを見ると、AI需要を本格的に取り込む準備が整いつつある段階だと読み取れます。

電線3社で言えば「古河電工に近い、これから再評価が進むかもしれない」ポジション。短期的な数字より、AI投資サイクルが本格化したときの底力を見たい銘柄です。

ディスコ:高収益の「安定王者」

営業利益率42%、6期連続最高益、配当も増配。3行の中で最も「ぶれない強さ」を持っています。

ニッチな分野でシェアを独占しているので、市場全体の波に左右されにくい。AI需要の急拡大局面でも、市場が落ち着いた局面でも、安定して稼げる構造。半導体株の中で最も「守りに強い」銘柄と言えます。

レーザーテック:四半期では読めない、長期で見るべき銘柄

世界シェアほぼ独占のEUVマスク検査装置メーカー。装置単価が極めて高いため、四半期業績はぶれやすいけれど、長期トレンドでは確実に成長している。

四半期決算のたびに大きく株価が動くタイプなので、短期トレードよりも長期保有向き。決算ニュースで動揺せず、5年、10年のスパンで見られる人向けの銘柄です。

まとめ

半導体4社の決算で見えてきたのは、「同じセクターでも、こんなに違う」という現実でした。

  • アドバンテスト:AI需要の最大恩恵者、営業利益+118.8%
  • 東京エレクトロン:盟主の真価が問われる局面、来期から本格化の見込み
  • ディスコ:高収益の「安定王者」、6期連続最高益
  • レーザーテック:四半期では読めない、長期で見るべき銘柄

決算分析シリーズの3回目を通して、私が改めて感じたのは、「決算は数字を見るだけでは足りない」ということです。その会社が何を作っているか、業界の中でどんな役割を担っているか、株価がどこまで織り込んでいるか。この3つを組み合わせて初めて決算の数字が立体的に見えてきます。

決算シーズンを使って、いろんなセクターを並べて見ると、相場の構造そのものが見えてきます。引き続き、いっしょに見ていきましょう。