【電線株】フジクラ、住友電工、古河電工の決算を分析します。AIバブルは続くのか?

コラム

テクニカルアナリストの向川です。

2026年5月12日から14日にかけて、電線3社の通期決算が出揃いました。

この3社はAIデータセンタ向けの光ファイバを供給する「AI関連の本命銘柄」として、過去1年で株価が大きく上昇してきました。今回の決算も、3社揃って好調な数字が出ましたね。

ところが、決算後の株価反応はまったく違いました。

  • 古河電工:決算翌日にストップ高
  • 住友電工:堅調に上昇
  • フジクラ:下落

同じ業界、同じテーマ、同じ追い風。なのにここまで反応が分かれた理由はどこにあるのか。

今回はこの3社の決算を並べながら、「決算の見方」そのものをアップデートする話をしていきます。チャート分析と同じくらい、決算の読み方は投資判断に直結します。

1.まず3社の実績を並べてみる

最初に、26年3月期の実績、つまり「終わった1年の成績」を並べます。

銘柄売上高営業利益純利益配当
フジクラ(5803)1兆1,824億円(+20.7%)1,887億円(+39.2%)1,572億円(+72.5%)100→225円
古河電工(5801)1兆3,076億円(+8.8%)639億円(+35.8%)725億円(+117.4%)120→210円
住友電工(5802)5兆1,101億円(+9.2%)4,181億円(+30.4%)3,695億円(+90.7%)97→154円

数字だけ見ると、3社とも文句なしに過去最高クラスの好決算です。

利益の伸び率トップはフジクラ。 売上規模で圧倒的なのは住友電工。 純利益が2倍以上に膨らんだのが古河電工。

3社に共通するのは、生成AIの普及でデータセンタ向けの光ファイバ需要が爆発的に伸びているという追い風。これが業績をまとめて押し上げました。

ここまでの話だけなら、3社まとめて買われてもおかしくないです。でも市場の反応は分かれましたが、その理由を見ていきます。

2. 鍵は「来期予想」にある

決算で市場が見ているのは、終わった1年の成績だけではありません。むしろ、その先の「次の1年どうなるか」をもっと見ています。3社の27年3月期予想を並べると、景色がガラッと変わります。

銘柄売上営業利益純利益
フジクラ+5.1%+11.8%△0.7%(減益)
古河電工+11.7%+48.8%+13.1%
住友電工+3.7%+1.6%横ばい

古河電工の来期営業利益は+48.8%。市場の事前予想(760億円程度)を大きく上回る950億円を出してきました。だからストップ高になった。

フジクラは営業利益+11.8%は決して悪い数字ではありませんが、純利益が減益予想。「来期も大きく伸びる」という前提で買われていた銘柄にとって、これは厳しい数字でした。

住友電工の実績は過去最高、ただ来期はほぼ横ばい。可もなく不可もなく、というのが市場の受け止めでした。

ここで覚えておきたいのは、決算の良し悪しは「実績」と「来期予想」の組み合わせで決まる、ということ。

実績がどれだけ良くても、来期予想が市場の期待を下回ると売られる。 逆に実績が普通でも、来期予想が事前予想を上回れば買われる。「決算は良かったのに売られた」という現象は、こうして起こります。

3. なぜフジクラだけ弱気な予想を出したのか

ここで気になるのは、「3社とも同じAIデータセンタ需要を取り込んでいるはずなのに、なぜフジクラだけが減益予想を出したのか」という点です。

フジクラの決算短信を読むと、会社自身が理由を書いています。大きく2つです。

原材料の調達制約

フジクラは光ケーブルの生産を急ピッチで増やしていて、日米で3,000億円を投じて生産能力を最大3倍にする計画を進めています。

ところが、この急増産に水素などの一部原材料の調達が追いつかない懸念があると会社が認めています。「需要はあるけれど、作りたくても作れないかもしれない」というリスクを、保守的に来期予想に織り込んだ、ということです。

ホルムズ海峡の物流停滞

足元で起きているホルムズ海峡封鎖の影響。ナフサなどの原材料供給に懸念があるものの、不確実性が高すぎて影響額を計算できません。だから来期予想には織り込んでいない、と明記してあります。

下振れリスクは保守的に見積もって、上振れの要素はガイダンスに入れていない。会社としてかなり慎重な姿勢で来期予想を作った、ということです。

一方、古河電工も同じ中東情勢のリスクは「合理的に予想することが難しい」として未反映、というスタンスは同じ。でもデータセンタ市場の活況継続を見て、強気の数字を出してきました。

つまり、同じリスク環境でも、会社によって「攻める」か「守る」かの判断が分かれたということで、フジクラは守りに入り、古河電工は攻めた。この姿勢の違いがそのまま株価の反応に出たということです。

4. 3社のポジションを整理する

ここまでで「なぜ反応が違ったか」は見えました。

ただ、これだけだと「古河電工が一番良くて、フジクラがダメ」という印象になりがちなので、もう少しフラットに3社のポジションを整理しておきます。

フジクラ:成長期待を最大に織り込んだ「攻めの銘柄」

過去1年の株価上昇率は、3社の中で群を抜いて高かった。最大で6倍近くまで買われています。

つまり「将来の利益」がすでに株価に大きく織り込まれていた銘柄です。こういう銘柄は来期予想が市場の期待を少しでも下回ると、大きく売られがちです。今回はその典型パターンでした。

ただ、中身を見れば配当性向は30%から40%へ引き上げ、自己資本比率は49%から58%へ改善、日米3,000億円の生産能力増強投資。長期で見れば地力は確実に上がっています。

「決算が悪い」のではなく「期待が先に行きすぎた」というのが正確な見方ですね。

古河電工:今まさに評価が変わりつつある「再評価銘柄」

3社の中で「ポジティブサプライズ」を一番出した銘柄。

来期営業利益+48.8%は市場予想を大きく上回り、ストップ高となりました。さらに退職給付制度を確定拠出年金に全面移行して194億円の特別利益を計上するなど、財務面でも材料が豊富でした。

加えて、配当方針を「配当性向30%」から「株主資本配当率(DOE)3.5%」に変更。これは業績が振れても配当が安定する、という株主還元の方針転換。長期保有の安心感が出る変更です。

7月に1株を10株に分割する予定もあり、個人投資家が買いやすい環境も整えてきています。

住友電工:規模と安定の「ディフェンシブな成長銘柄」

3社の中で一番「安定」しています。

売上5兆円、純利益3,695億円という規模そのものが圧倒的。AIデータセンタ向けの光製品だけでなく、自動車のワイヤーハーネス、電力ケーブル、超硬製品など、事業の幅が広い。一つの分野が崩れても全体は揺らぎにくい構造です。

来期予想がほぼ横ばいなのも、業績が大きく上下するタイプの会社ではない、という性質を反映しています。

7月に1株を4株に分割する予定もあり、個人投資家を意識した動きが出てきています。

5. 今回の3社決算から学べること

3社の決算と株価の反応を見ると、いくつか教訓が抽出できます。

「実績」と「来期予想」と「期待」の3点セットで見る

決算は、実績だけでも、来期予想だけでも判断できません。そこに「市場がどれだけ期待していたか」が加わって、初めて株価の反応が決まります。

「決算が良かったのに下がった」というニュースを見たら、必ずこの3つの組み合わせで考えてみてください。実績が良くても、市場の期待を超えなければ売られる。これは銘柄を選ぶときも、保有を続けるかどうか判断するときも同じです。

株価の上昇率が「織り込み度」を示す

フジクラのように1年で株価が6倍になった銘柄は、それだけ将来の利益が織り込まれているということ。

裏を返せば、ほんの少しでも期待外れの材料が出ると、大きく下げる脆さを持っています。「人気の銘柄ほど決算は厳しい」というのは、こういう構造から来ています。

同じテーマでも会社の姿勢で結果は分かれる

AI関連、光ファイバ、データセンタ。同じテーマで動いているように見える銘柄でも、会社の姿勢が違えば来期予想は変わります。

フジクラは保守的、古河電工は強気、住友電工は中間。決算短信の本文を読むと、この姿勢の違いは数字以上にはっきり見えてきます。テーマだけでまとめて買うのではなく、1社ずつ中身を見る価値がある、ということです。

まとめ

電線3社の決算を並べて見えてきたのは、「決算の良し悪しは、実績だけでは決まらない」というシンプルな事実でした。

  • フジクラ:実績は最高、来期予想は保守的 → 売られた
  • 古河電工:実績も来期予想も市場予想超え → ストップ高
  • 住友電工:実績は過去最高、来期はほぼ横ばい → 堅調

3社ともAIデータセンタという同じ追い風を受けています。それでも反応が違ったのは、市場がそれぞれの銘柄にどれだけ期待していたか、そして会社の姿勢が攻めか守りか、という2つの要素が絡んだ結果です。

決算の数字を見ると同時に、「市場の期待値」と「会社のトーン」を読む。これができるようになると、決算後の株価の動きが格段に予測しやすくなります。