中東情勢が与える日本株と米国株の影響

コラム

From:編集部 小早川

中東情勢が悪化しています。2024年4月19日にイスラエルがイランに攻撃をしました。

今後、中東情勢が不透明になる可能性が高く、多くの方が心配しているのではないでしょうか?

今回はこれまで起きた世界の有事がアメリカの株式市場にどのような影響を与えてきたかを4つの例を出して解説をします。

湾岸戦争

出典:tradingview

1990年8月2日にイラクがクエートに侵攻し、湾岸戦争が起こりました。

戦争が始まるおよそ2週間前の7月16日にS&P500は市場最高値をつけていましたが、そこからイラク侵攻まで株価は下落を続けていました。

石油生産国の間で起きた戦争だということもあり原油価格に大きな影響を与えました。

7月16日WTI原油価格は18$でしたが、10月11日までに40$へと原油価格は倍以上になったのです。

株はどうなったかというと開戦前のピークから10月11日までにS&P500はおよそ20%下落。

しかし、10月11日以降WTIはその後、年末まで下がり続けました。そうすると原油価格の下落を受けS&P500は上昇するという展開となりました。

翌年の1991年1月16日に今度はアメリカ率いる国連軍がイラクへの空爆を開始。

1月に入って原油価格は上昇し株価も下落しましたが、1月16日に空爆が開始された日、原油価格は32$でピークをつけ、その後、原油価格は下落。

国連軍の攻撃は典型的な「ニュースで売れ」ということで原油価格はその後下落に転じました。

結果として株価は上がっていき、その後2月28日にはイラクが負ける形で戦闘は停止されました。

この頃には原油価格は20ドルへと下落。その後、原油価格は安定的に推移。

戦争最中のS&P500の底、これは1990年10月11日なのですが、ここから終戦1991年2月28日までの株価を見ると32%の上げとなっています。

この時は戦争中に原油価格が上がり、それを受け株価が下がるという教科書的な展開となっています。

ちなみに、日経平均株価もS&P500と同じような動きになっているのはチャートからわかります。

イラク戦争

出典:tradingview

この戦争の理由は2001年9月11日アメリカで起きた同時多発テロです。

ブッシュ大統領がイラクがテロ組織のアルカイダと連携している、そしてイラクは大量破壊兵器を保有していると主張。

これを受け2003年3月20日アメリカを中心とする連合軍がイラクに対して軍事攻撃を開始しました。

株価は国連軍による攻撃が始まるまで下落していたのですが、その後、攻撃開始と共に株価上昇。

2003年3月20日から2007年の10月9日までトレンドが続き、アメリカ株・日本株ともに上昇を続けました。S&P500はほぼ8割、日経平均株価も5割も上昇したことになります。

原油価格は2003年3月20日の攻撃時点のWTIは25$でしたが、それが4年半後の2007年10月9日までにWTIは80$を超えてきました。

この時は原油価格も上昇、金利が上がっていたのですが、株価も上昇するという展開となりました。

ただS&P500、日経平均株価ともに2007年にピークをつけその後下落することになりました。理由はリーマンショックです。

この頃にはアメリカの住宅価格のバブルが弾け、消費者信頼指数も大きく下落。

アメリカの金融機関もおかしくなり始めたという状況でした。なのでこの時の下げというのは戦争は関係なく、リーマンショックという世界金融危機があったからといえるでしょう。

クリミア危機

出典:tradingview

2014年にクリミア危機というのがありました。当時、ウクライナの領土であったクリミア半島をロシアが自国の領土として併合しました。

自分のものだと勝手に主張したわけです。今回のロシアのウクライナ攻撃の前兆といっても過言ではないでしょう。

この時、ロシアが観光地であるソチで冬季オリンピックを開催している最中に起きました。

クリミア半島へ侵攻して1ヶ月後にロシアはクリミアで国民投票を行い、強制的にクリミアをロシアのものとしました。

この時のS&P500や日経平均株価は基本的には関係ないという反応をしています。

ウクライナ侵攻

出典:tradingview

クリミア半島の併合が起きたほぼ8年後、ロシアは2022年2月24日にウクライナに侵攻しました。

ロシアは原油埋蔵量で世界6位の国です. そこが戦争を始めたということで侵攻が始まると同時に原油価格は侵攻後3ヶ月間で18%上昇しました。

ただ2021年末から見てみますと、原油価格は半年後のピークをつけた6月14日までに64%上がっています。

では株式市場に与えた影響ですが、2022年アメリカ株は大きく下落しました。

この戦争はアメリカですでに起きていたインフレをさらに悪化させたというインパクトがありました。

分かりやすいところでいうと、例えばガソリン価格の値上げです。

これは多くのアメリカの消費者を困らせることになりました。

ガソリン価格は2022年6月に1バレルあたり5ドルを超えてアメリカでは大騒ぎとなりました。

アメリカでは戦争が起きてから21日経った3月17日からFRBによる利上げが始まっていますから、ロシアによるウクライナ侵攻はその利上げに拍車をかけたということになるでしょう。

今回のイスラエルの攻撃の影響は?

2024年4月19日のイスラエルがイランに攻撃をしたと言うニュースは世界中に衝撃を与えました。

日経平均株価は、同日− 1011円、S&P500はマイナス43.89ポイントと大幅に下落をしたのです。

今後の影響ですが、少なからず株式市場に影響を与えそうです。というのも日経平均株価もアメリカ株も、2024年年初来から大きく上昇をしており、調整局面をいつ迎えてもおかしくないからです。

そのような状況で、株式の調整のきっかけを与える材料として今回の攻撃が起こりました。

もしかするとしばらく、下落相場が続く可能性があるでしょう。ただし、その後は上昇相場になる可能性が高いので、逆に株式を仕込む良いタイミングであるともいえます。

まとめ

今回は2024年4月19日に起きたイスラエルのイナに対する攻撃の株式市場に与える影響について考察をしました。

未来を予測するためには、過去の出来事を参考にするのが良いです。

今回は、1990年に起きた湾岸戦争から、2022年に起きたウクライナ戦争までいくつかの戦争についてピックアップしました。

ぜひ今回の記事を参考にしていただき、ご自身なりの考えを持っていただければ幸いです。