【FRBパウエルvs日銀植田】会見から見えてくる相場の歴史的な転換点

コラム

テクニカルアナリストの向川a.k.aチャートの向こう側です。

7月末まで上昇を続けた日本株ですが、8月に入ってから歴史的な暴落になりました。

前回書いた暴落はこちらを参照。
【歴史的暴落】日本株から始まった全世界金融ショック

しかし、そのあとは予想通り緩やかに円安進行し、株価も回復してきました。こちらは直近1ヶ月の日経平均の推移ですが、現在38,000円を超えたところまで戻りました。(8/25現在)

こちらは米国の株価指数、ダウ平均ですが、4万ドルを再度超えてきましたね。今週の米国市場はジャクソンホール会議でのパウエル発言が警戒されていましたが、利下げが少しずつ現実的になってきて市場はポジティブです。

また、7月末から上昇を続けていて、ひとまずの調整期間に入っていましたが、現在は復調していい流れに転換してきています。

そして、今週は日本の中央銀行である日銀、米国の中央銀行であるFRB、それぞれトップの植田さんとパウエルさんのメッセージが出たので、今日はザクっと振り返りましょう。

日銀植田さんはなんて言ってた?

出典:日経新聞

そもそも今月頭の暴落は、日本の利上げに市場が反応したからで、想像以上に反応が大きかったので数日後には日銀の副総裁が出てきて急激な利上げはないことを表明しました。

出典:NHK

出典:NHK

これによって市場は「緩和が継続する」と判断し、私もSNSで予測したようにドル円は緩やかな円安に進みました。

今週の会見で植田さんが言ったことは、

・物価の上昇に対して金利が低すぎる
・利上げの方針は変わらない
・中立的な金利水準まで利上げする

この3つがポイントだったと思います。

そもそも私は、物価上昇(インフレ)は悪いことではなく経済成長には欠かせないもので、いわば”筋肉痛”みたいなものだと思っています。

そして、大事なことは「どれくらいのインフレが理想か?」ですが、これが世界的には2%と判断されます。現在の日本の物価上昇率は2.7%くらいで、緩やかに上昇しているのは事実です。

なので、目先すぐすぐの利上げはないと思われますが、今後はゆっくりと利上げに向かうのは間違いなく、日本の長期金利は現在1%前後から2%に引き上げられていくと考えておいた方がいいでしょう。

当然、金利が上がると、住宅ローンやクレジットカードなどの金利も上がりますから、経済にブレーキがかかります。反対に金利が下がると経済にアクセルを吹かせて行くことになります。

ですので、金利の動向はとても重要なのです。

FRBパウエルさんはなんて言ってた?

出典:朝日新聞デジタル

では次に、米国FRBのパウエルさんの会見ですが、今週は年に1度開催されるジャクソンホール会議がありました。ここで開かれた会見で言ってたことをまとめると、

・金融政策は調整の時期がきた
・労働市場のさらなる冷え込みは避けたい
・インフレが2%に向かう確信が得られた

この3つがポイントだったと思います。この話を理解するにはストーリーが大事です。

そもそも米国はコロナ以降、インフレに悩まされて、物価がとんでもないことになったわけです。日本と比べ物にならないほど物価が上がりました。

その背景にはジャブジャブにお金をばら撒いたりロシアとウクライナがバチバチになってエネルギーが高騰したり、中国が経済的に強くなって”世界の工場”ではなくなったり、いろんな要因があります。

だから2022年あたりから急激な利上げを進めてきて、今に至ります。つまり、、長く続いた利上げという階段は終わりを迎えており、今その最終局面の”踊り場”にいたわけです。

それが昨年末からいよいよ利下げの話が出てきたことで、相場の雰囲気も変わってきました。当初は春に利下げだったのが、少しずつ後ろにずれて、今回の会見から9月利下げが濃厚になりました。

つまり、これまでの「利下げがあるのか?」から、「どれくらい利下げするのか?」に市場の関心が移ったのです。

この変化によってドルが下がっており、ドル円が円高(ドル安)に向かったのはもちろん、他の通貨と見てもドルが全面安になっています。

ですので、これまで日本で懸念されていた円安はもう終わりで、これからは円高トレンドがはじまることもほぼ決まりでしょう。

投資家としては円安の方がいいのですが、この辺りの話はこちらに書いています。
第一弾:ドル円158円!円安でピンチ?円高の方がいい?悲観的な経済オンチさんへ。

【インフレvs不景気】の攻防戦

そもそも日本も米国も、金融マーケットのトップの人たちは何をやっているのでしょうか?

例えるなら、「綱渡り」をやっていると考えると、わかりやすいかもしれません。

高いところで綱渡りをしていて、右に落ちたらインフレ、左に落ちたら不景気。どっちにも落ちたくないので、ちょうどいいところでバランスをとりながら経済をハンドリングしているのが、パウエルさんと植田さんです。

米国と日本は世界中の金融マーケットが見ていますし、ドルも円もそれぞれ重要な通貨です。

米国は上がり続ける物価にブレーキをかけるため、金利を上げて調整しました。でも調整しすぎると(金利を上げすぎると)不景気になるかもしれません。

米国は世界経済のトップですし、何がなんでも不景気入りして経済がクラッシュすることは避けたかったはずです。当然、その動向を中国も見ているからです。

こちらは米国の物価上昇の推移ですが、MAXは2022年の春から夏あたりで、8%とか9%まで上昇しています。


出典:statista.com

ちょうど私がロサンゼルスに行ったのもこれくらいで、確か22年夏でしたが、ざっと都内と比較しても3倍から5倍くらい違うなと思いましたね。

ファーストフード店のバイトの時給が4,000円とか5,000円ですよ!それでも生活できない人が続出していたのですが、このレベルのインフレを許容するほど、とにかく不景気になることを避けたかったと思います。

一方で日本はどうでしょうか?先ほど書いたように、これから利上げの方針は変わりません。しかし、日本の物価上昇はまだまだ2%台と低いです。

確かに2%のインフレが健全とは思いますが、私が懸念するのは、綱渡りでインフレに恐怖するあまり、不景気側に落ちないか?ということです。

かつて日本はバブル経済に湧きましたが、その後にバブル崩壊、長く続くトンネルの中にいます。バブル崩壊は「急激な利上げ」が原因でした(と、不動産の規制)が、また同じミスをやろうとしていることに一国民として危機感を持っています。

さらに9月は日本の総裁選挙もあり、日銀会合、米FOMCがあります。来週はエヌビディアの決算ですね。

その次の週は雇用統計ですが、今回の雇用統計はとても重要な役割になるはずです。毎月恒例のライブも予定しているので、全員集合!しましょう。

私たちは、世界経済をけん引する米国と、そのパートナーである日本。それぞれの金融マーケットの歴史的な転換点の目撃者になるのです。その変化をチャンスに変えて、いい波乗っていきましょう!