【第1弾】日本の半導体株おすすめ5選。特徴や強みなどザクっと銘柄解説。【アドバンテスト、東京エレクトロン、レーザーテック、ディスコ、ソシオネクスト】

コラム

テクニカルアナリストの向川a.k.aチャートの向こう側です。

最近、ニュースや新聞で「半導体」って言葉をよく耳にしませんか?

「なんだか難しそう…」と感じる方も多いかもしれませんが、実は私たちの生活に欠かせない重要な技術で、スマートフォンやパソコン、ゲーム機、自動車、さらには軍事や宇宙産業まで、あらゆる電子機器に半導体は使われています。

いま、半導体産業が世界中でバズっていて、日本も半導体製造装置や検査装置、材料で世界トップクラスの実力を持っています。グローバルなサプライチェーンで欠かせない存在なんですよ。(かつては世界シェア30%くらい持っていたんですけどね)

2025年6月末現在、半導体セクターも盛り上がっているので、今日は売買高ランキングで上位にくる半導体関連企業5社をピックアップ。

売買高が高いのは市場の注目度が高いからで、つまり投資のチャンスも大きいということ。この記事では各社の事業内容や強み、投資のポイントをわかりやすく解説します。

日本政府の半導体支援策やTSMCの熊本進出など、2025年の市場環境も見逃せません。さあ、半導体株の魅力に迫ってみましょう。

半導体って、そもそもなんで注目されてるの?

私たちの暮らしのあらゆる場面に半導体チップが組み込まれており、今後のさらなるテクノロジーの進化で半導体の「需要」はますます増えるはずです。

実際、半導体の設備投資や開発に世界中の企業が巨額の投資をしていて、株式市場でも関連銘柄は主役級の存在です。

日本は昔、世界の半導体市場で圧倒的な存在感を持っていました。その後、韓国・台湾・アメリカの勢いに押されて停滞していた時期もありますが、いま再び、「日本の半導体も強いぞ」という声が高まっています。

というのも、日本には半導体をつくるための装置や、チップをつくる前後に必要な検査や加工の技術、独自の設計ノウハウや特許技術などがあるため、いわば「縁の下の力持ち」的な立場で、世界的に見ても有力な企業がいくつもあるんですよ。

なので、「半導体」と言っても細かく分けたらたくさんあって、小さい企業から大手まであるのですが、今回はこちらの5社について掘り下げます。

①:アドバンテスト(8035): 半導体の「健康診断」をする検査装置のトップメーカー。

②:東京エレクトロン(8035): 半導体製造装置の総合王者、世界シェアトップクラス。

③:レーザーテック(6920): マスク検査装置で世界シェア100%のニッチな覇者。

④:ディスコ(6146): ウエハを切ったり磨いたりする装置で世界をリード。

⑤:ソシオネクスト(6526): カスタムSoC設計で急成長、車やAIに強い。

です。では1つずつ見ていきましょう。

①:アドバンテスト(8035): 半導体の「健康診断」をする検査装置のトップメーカー。

アドバンテストは、作られた半導体が設計図通りに正しく動くかをチェックする、いわば「半導体の品質を守る門番」とも言える世界的メーカーです。

半導体チップは目に見えないような微細な構造でつくられていて、わずかな欠陥でも不具合や故障の原因になります。

そのため、チップが完成したあとに「ちゃんと動くかどうか」を高速かつ正確にテストする装置が欠かせません。アドバンテストはその分野で世界トップクラスのシェアを誇ります。

特に強いのがAIチップやスマホ向けの「ロジック半導体」のテスト装置で、最近は自動運転や生成AIなどの広がりによってチップ自体が高性能化、そして複雑化しており、テスト工程のニーズも爆発的に増えています。

顧客にはTSMCやサムスンなどの世界の大手ファウンドリをはじめ、NVIDIA、Appleなどの有力半導体プレイヤーが並びます。

スマホの頭脳である「SoC」のテスターでは世界シェア約50%で、AIの学習に不可欠な「高性能メモリ」など最先端半導体のテストに不可欠な技術を持っているのも強みで、AIの進化で需要が爆発しているGPUのテストでも圧倒的な存在感です。

NVIDIAみたいなAIチップメーカーがどんどん新製品を出す中で、検査装置のニーズも急増しています。アドバンテストはこの流れに乗ってるのが強み。

2024年度の売上高は前年比10%増で、さらに伸びていきそうです。直近でもTSMCの熊本工場が2024年に稼働しましたが、アドバンテストの装置はそこでも活躍。技術開発にも投資しているので、未来のチップにも対応していくでしょう。

2025年6月時点で、アドバンテストの株価は1万円ちょっと。やっと年初の株価に戻ってきました。売買高も活発で投資家の注目度は高いです。

2025年5月の「SEMICON Southeast Asia 2025」というイベントでは、AIや次世代チップ向けの新技術も発表するなど、次の決算がもう少しでありますが、売上拡大が期待されていますね。

②:東京エレクトロン(8035): 半導体製造装置の総合王者、世界シェアトップクラス。

東京エレクトロンは、半導体を作るための様々な「製造装置」を開発・販売している、この分野の世界的リーダー企業です。

半導体を料理に例えるなら、調理に欠かせない超ハイテクな調理器具や厨房設備を提供している「シェフの右腕」のような存在。世界中のほぼ全ての半導体工場で、東京エレクトロンの装置が活躍しています。

最大の強みは、半導体の回路図をウェーハ(半導体の材料)に焼き付ける「リソグラフィ」という最重要工程で使われる「コータ・デベロッパ」という装置で、世界シェアをほぼ独占しています。

最先端の露光装置を作っているオランダの半導体大手ASMLを「超高性能なカメラ」だとすれば、東京エレクトロンの装置は「そのカメラの性能を100%引き出すための専用フィルムと現像技術」のようなもの。

両方が揃わないと最高の写真は撮れない、という盤石の関係を築いています。(だから半導体規制の話が出てきたら、ASMLと東京エレクトロンがセットで出てくるわけ)

さらに、回路を彫る「エッチング」など他の多くの工程でも高いシェアを持っているのも強みです。

TSMCやサムスン、インテルなど世界の名だたるチップメーカーが主要顧客で、AIやデータセンターの需要拡大から各社が工場を次々と増設しています。

「工場が建てば、そこに必ず装置が必要になる」ので、半導体の設備投資が活発になればなるほど東京エレクトロンの売上も伸びていくわけですね。

装置を売って終わりではなくて、導入後のメンテナンスやソフトウェアアップデートなどアフターサービスでもしっかり稼ぐモデルのため、利益率が高く、リピート性もあるのが特徴です。

財務的にも非常に安定していて、自己資本比率80%以上、営業利益率30%前後と高水準。海外売上比率80%以上です。

最先端半導体の製造に不可欠な存在なので、市場全体の成長の恩恵を最も受ける企業の1つと言えますし、特定の半導体、例えばメモリやCPUなどの好不調だけでなく、「半導体全体の需要が今後も伸び続ける」と考えるなら、まず最初に検討したい「王道銘柄」ですね。

③:レーザーテック(6920): マスク検査装置で世界シェア100%のニッチな覇者。

レーザーテックは、半導体の回路図の元となる「フォトマスク」という原版を検査する装置のメーカーです。

フォトマスクは、写真でいう「ネガ」のようなもので、ネガにちょっとでも傷があれば全て不良品になってしまうため完璧に検査する技術が必要です。レーザーテックはその検査装置で世界をリードしています。

この会社の強みは、一言でいえば「オンリーワン」であること。最先端の半導体製造に不可欠な「EUV」という特殊な光を使って作られるフォトマスク。

このEUV用マスクを、製造時と同じEUV光を使って検査できる装置を世界で唯一、商用化しているのがレーザーテックなのです。この独占的な技術が、他の追随を許さない圧倒的な競争力となっています。

半導体の技術は常に競争で、回路をいかに細かく描くかが勝負です。そのための切り札であるEUV技術の導入は、今後さらに加速していくことはほぼ間違いないですし、高性能な検査装置への需要は増え続ける一方で、レーザーテックの独占的なポジションは強いですね。

こちらもTSMCやインテル、サムスンが顧客です。米国だとKLA(ティッカー:KLAC)がライバルになりますが、技術的にはレーザーテックが断然上で、装置1台30~50億円と高価格で利益率も高いのも特徴ですね。

他にも次世代パワー半導体向けの検査装置分野にも進出していて、この分野も期待されています。

直近の決算でも営業利益477億円(+122%)と過去最高でしたし、次回の決算も期待ですね。

レーザーテックも強みは技術。その唯一無二の技術力と高い成長性への期待から、常に市場の注目を集めている銘柄です。

④:ディスコ(6146): ウエハを切ったり磨いたりする装置で世界をリード。

ディスコは、半導体の製造工程の中でも、できあがったチップを「切る」「削る」「磨く」という3つの超精密な加工技術に特化した装置メーカーです。

「チップって切るの?」と思うかもしれませんが、実はこれものすごく重要な工程で、半導体はもともと1枚のウエハー(薄い円盤状の素材)で製造されて、その後、必要なサイズに切り出して個別のチップとして完成します。

この「切り出し」や「研磨」の作業に必要な機械をつくっているのがディスコで、たくさんの半導体チップを1つ1つ切り分けて、指定の薄さまで削る装置で世界シェア7〜8割を持っています。

ディスコの強みも圧倒的な技術力、そして収益性の高さです。半導体を薄く、小さく、そして正確に加工する技術は随一で、「ディスコにしかできない」技術があるため高い利益率をキープしています。

0.5mmのシャーペン芯を846分割できるほどで、とんでもなく薄くカットする技術が強み。また、装置だけでなく消耗品である精密機器でも収益を上げています。

装置そのものの性能はもちろんのこと、加工精度が圧倒的に高く、アフターサポートや消耗品の質も非常に高いようで、「安心して使える高品質」が世界中の半導体メーカーから評価されています。

スマホやカメラ、車載センサーなど小型で高性能な電子部品をつくる際にもディスコの装置は使われていて、領域はかなり広いです。

EVやAI向けパワー半導体の成長市場と高いシェアで、利益率は36%。財務も健全で、自己資本比率は80%台。利益率も高く、安定配当かつ自社株買いも実施したり投資家への還元も前向き。

研磨の世界的トップ企業、ディスコも注目です。

⑤:ソシオネクスト(6526): カスタムSoC設計で急成長、車やAIに強い。

最後はこちら。ソシオネクストは、自社で工場を持たない「ファブレス」という形態で、つまり「製造はしない」というスタイル。自社工場を持たず、半導体チップの設計に特化したファブレス企業として注目されています。

まだ上場して数年の企業ですが、例えるなら洋服の「オーダーメイドの仕立て屋さん」みたいなイメージ。

既製品の服(半導体)では満足できない顧客のために用途やサイズに完璧にフィットする一着を設計するのが仕事です。

特定の機能に特化した半導体をゼロから設計できる世界トップクラスの技術力が強みで、彼らが手掛ける「カスタムSoC」というものが自動車の自動運転支援システムや、データセンターの巨大なサーバー、高速通信網など、社会の最先端分野で心臓部の役割となっています。

顧客と連携しながら、その製品のためだけの「専用の頭脳」を作り上げるのが強みとも言えますが、今、半導体業界では「一社一社が自社製品に最適化された専用半導体を持ちたがる」という大きなトレンドがあります。他社との差別化を図るためです。

これはソシオネクストにとって強力な追い風で、彼らの「オーダーメイド設計」のニーズは高まりそうです。

元々ソシオネクストは、富士通とパナソニックの半導体部門をベースに、2022年に上場しました。

NTTとの共同プロジェクトなど国内大手企業や政府とも仕事するなど、将来的には「日本版エヌビディア」的な存在として期待されています。エヌビディアもファブレス企業で、実際に作っているのはTSMCなど。

工場を持たない「ファブレス」モデルは設備投資が少ないので、高い利益率なのが魅力。

「これからの時代は、専用半導体が主役になる」という声もある中で、そのトレンドをど真ん中で進むソシオネクストにも期待です。

まとめ

ここまで日本の主力半導体関連銘柄5社を解説しました。

ザクっとまとめると、

・半導体製造の全工程を支える「王様」の東京エレクトロン

・最先端の原版を検査するオンリーワン技術を持つレーザーテック

・AI時代の「品質を守る門番」であるアドバンテスト

・ミクロの世界を「切る・削る・磨く」職人集団のディスコ

・顧客のためだけの「オーダーメイドの脳」を設計するソシオネクスト

みたいなイメージです。一言に「半導体株」と言っても、関わっている工程やビジネスモデルはまったく違いますよね。

「半導体」と聞くと、少し難しくて遠い世界の話に感じるかもしれませんが、意外と身近なところにあるんですよね。私たちの暮らしや社会の未来をつくる、今後も絶対に必要なテクノロジーです。

もう少しでまた決算も始まるので、この辺りのザクっと前提情報を頭に入れてから決算を見ると、また違った見方ができると思います。