From:編集部 黒木
投資にはさまざまな「投資格言」がありますが、「セルインメイ」はかなり有名な投資格言です。
セルインメイの意味は、「5月に売れ」です。
セルインメイは非常に有名な投資格言ではありますが、今回はこのセルインメイの本当の意味とセルインメイは正しいのかについて説明をします。
「セルインメイ」の本当の意味とは
セルインメイ「株は5月に売れ」ということは、「5月は株価が下がるから早めに逃げておけ」と思っている方が多いのではないでしょうか。
しかし、本当に過去のNYダウや日経平均株価は5月に株価を下げているのでしょうか。
NYダウと日経平均と過去30年の5月の株価を見てみると、NYダウは上昇が60%、下落が40%、日経平均株価は上昇下落ともに50%前後でした。
つまり、5月に株価が下がりやすいという明らかな傾向は見られないのです。むしろ、NYダウは5月は株高の方が多いくらいです。
ではなぜセルインメイが根強く残っている格言なのでしょうか。実はセルインメイという格言には続きがあるのです。
セルインメイの全文は以下の通りです。
「Sell in May and go away, don’t come back until St.Leger day.」で、直訳すると「5月に売ってセント・レジャー・デーまで戻ってくるな」となります。
「5月に売却したらSt.Leger day(セント・レジャー・デー)まで株式市場に戻ってくるな」ということです。
セント・レジャー・デーとは、何かというと「9月第2土曜日」のことでイギリスで大きな競馬レースが行われる日です。
この相場格言の本当の意味は、まず株高の5月に売っておいて、株式市場が盛り上がらない6月から8月は完全スルーして、9月第2土曜日以降に株を買えという意味になります。
5月に株価が下落するから売れというのは、正反対で「5月は株高になるから売却しろ」という意味になります。
さらに簡単にいうと「春に売れ。夏は何もするな。秋に買え」ということです。
セルインメイは正しいのか?
本当にセルインメイは正しいのか疑問に思っている方も多いでしょう。
「春が株高になりやすい」といわれるのは企業の決算ラッシュがあることやヘッジファンドが新年度になって買いに走るなど色々といわれていますが、根拠は定かではありません。
「夏は相場が冴えない」というのは、夏枯れ相場という言葉に象徴されるように、一般に夏は株式市場が盛り上がらないといわれています。
なぜかというと、1年で最も取引参加者が減るシーズンで、日本はお盆、海外は避暑地へのバカンスでマーケットが閑散となるからです。
「秋以降は株高になりやすい」というのは、「ハロウィン効果」と呼ばれるアノマリーがあり、10月31日のハロウィンを境に株価が上昇していくという傾向にあります。
このアノマリーの合理的な理由はありませんが、なぜか上昇傾向にあるのです。
セルインメイという相場格言に従って、「5月に売却して、夏はなにもしない、9月以降に買う」このサイクルを繰り返すと本当に儲かるのか検証してみました。
過去30年の日経平均株価の場合、10月に買って5月に売るという戦略は勝率約60%、30年の平均リターンは5.2%ほどです。バブル崩壊も含めている割にはかなり優秀ではないでしょうか?
過去30年間のNYダウの場合は勝率が約87%でした。これを聞くと「セルインメイは正しい」と思うかもしれませんが、米国株は基本的に右肩上がりで上昇しているのでなんともいえないところはあります。
しかし、日経平均株価もNYダウもセルインメイの従って取り引きをすると勝率は高いのは間違いありませんでした。
では「セルインメイの逆をしたらどうなるか」日経平均株価で調べてみました。
1991年10月〜2023年4月の日経平均株価で以下の条件で売買をしたときのリターンはこのようになりました。
- 10月末に買い、4月末に売る戦略…リターン391%
- 4月末に買い、10月末に売る戦略…リターン47%
- 売買せず継続保有する戦略…リターン177%
このように、圧倒的に「セルインメイ」が機能しているのがわかります。
アノマリーの中には、有名になりすぎて、機能しなくなっているものもある中、投資の世界で最も有名な格言の1つである「セルインメイ」はかなり優秀な格言であるといえるでしょう。
アノマリーや投資格言を使った投資戦略はしっかりと検証が必要
セルインメイについては、しっかりと格言通り、機能をしていますが、すべてのアノマリーがそうとは限りません。
投資の世界には様々なアノマリーがあります。アノマリーを聞くと飛びついて、その通りに投資をしてしまう人も多いのは事実です。
確かに役に立つ場合もありますが、実際に投資をする際は、まずはご自身でしっかりと検証するのが重要になります。
最近、アノマリーの中には、意外と機能しなくなったものもあるからです。
なぜ機能しなくなったかというと、そのアノマリーが有名すぎて、多くの人がそのような行動をとるようになったからです。
機関投資家など大口の投資家は、マーケットを動かすことができるので、大きくお金が集まったところで、逆の動きをして一般投資家のお金をロスカットさせ、儲ける戦略を取る場合が多いです。
このように、アノマリーは必ずしも機能するわけではありませんので、必ずご自身の目でしっかりと検証するのが良いでしょう。
まとめ
今回は最も有名な投資格言の1つである「セルインメイ」について説明をしました。数ある投資格言の中で「セルインメイ」はかなり機能しているのがご理解いただけたのではないでしょうか。
他にも有名な投資格言はたくさんあります。ぜひ今回の記事を参考にしていただき、「セルインメイ」のような投資格言に興味を持っていただければ幸いです。