From:編集部 黒木
株式市場にはさまざまなアノマリーやパターンが存在していますが、その中でも年初の1月のマーケットの動きは、投資家たちの間で特に注目されています。
「1月効果」と呼ばれる現象や、1月の相場動向がその年の株価トレンドを左右するという考え方について、実際のデータを基に詳しく検証してみました。
1月の株式投資を行う際の参考にしてください。
1月のアノマリーとは
株式市場では、理論的な説明が難しい現象が時として見られることがあります。
特に季節性や月次で見られる特徴的な値動きは、「アノマリー」と呼ばれ、多くの投資家たちが注目をしているので、ぜひ知っておきましょう。
1月のアノマリーで最も有名なものが「1月効果」です。
1月のアノマリーの1月効果は、株価が上昇しやすいといったものになります。
「1月効果」が生じる背景には、主に2つの理由があると考えられています。
1つ目は機関投資家の行動パターンです。
多くの機関投資家は年末年始にかけて、取引量を抑える傾向にありますが、新年が始まると新たな運用計画に基づいて積極的な投資行動を再開します。
この「新年効果」と呼ばれる現象が、マーケット全体の上昇要因となるのでしょう。
2つ目の理由は、個人投資家による税金対策に関連した売買行動です。
12月には確定申告に向けた損失確定の売りが出やすく、その後、1月になると買い戻しの動きが見られます。
また、源泉徴収で納めた税金の還付を見込んで、年明けから新規の投資を始める投資家も少なくありません。
これらの行動により、1月は株価が上昇しやすいといわれているのでしょう。
1月効果は本当なの?実際のデータを検証してみた!
では、実際のデータを見ながら、この「1月効果」の実態を検証していきましょう。
まず、日本の株式市場の代表的な株価指数である日経平均株価のデータを分析してみました。
2000年以降の記録を見ると、1月の騰落率は上昇が12回、下落が10回となっており、上昇確率は約55%です。
一見すると若干上昇傾向が強いように見えますが、同じ期間の年間騰落率が上昇14回、下落8回であることを考慮すると、1月が特別に強い月とまではいえないことが分かります。
むしろ注目すべきは、1月に大きな下落を記録したケースが複数存在することです。
例えば、2008年のリーマンショック時には11.2%の下落、2009年には9.8%の下落を記録しています。
また、2014年にはアルゼンチンペソの急落を受けて8.5%の下落、2016年には米国の利上げ懸念から8.0%の下落がありました。
より長期的なデータを見てみると、1976年からのデータでは、1月の上昇確率は62%と高い水準でした。
しかし、バブル崩壊後の1990年以降では53%に低下し、さらにリーマンショック以降の2008年以降では50%まで低下しています。
この傾向は、マーケット環境の変化とともに「1月効果」が徐々に弱まってきていることを表しています。
「1月効果」は特に小型株において顕著だといわれているので、新興市場の代表格である東証マザーズ指数(現:東証グロース市場250指数)についても分析を行ってみました。
2004年以降のデータを見ると、1月の上昇回数は10回、下落回数は8回となっており、上昇率は約56%です。これは日経平均株価と同程度の確率ですが、注目すべきは値動きの大きさです。
マザーズ指数の1月の平均上昇率は2.8%となっており、10%以上の上昇を記録したケースも4回存在します。
一方、日経平均株価では同期間において2桁の上昇は一度も記録されていません。
このことから、小型株市場では年初に大きな上昇が起きやすい傾向があるといえます。
また、マザーズ指数では1月が上昇した年の62%で年間でもプラスのリターンを記録しており、年間パフォーマンスとの相関性も高いことが分かります。
米国市場の動向もNYダウで見てみました。
2000年以降のデータでは、1月の上昇が10回、下落が12回と、むしろ下落傾向が強くなっています。
上昇確率は45%で、同期間の年間上昇確率76%と比べると、かなり低い水準となっています。
ただし、1月の相場動向と年間の騰落率の相関は比較的高く、62%の確率で同じ方向に動いていました。
これらの分析から、「1月効果」は過去には確かに存在した現象であるものの、近年ではその効果が徐々に弱まってきていることが明らかです。
1月効果は徐々に薄れてはいるものの、年間の相場動向を予想することができる
今回検証した結果、1月効果は近年、徐々に埋まってはいますが、1月の株価の動向が年間の株価を予測する重要な月であることに変わりはありません。
また、そもそも株式投資は短期で行うものではなく、長期投資が基本になります。仮に1月効果が外れたとしても、長期で投資を行えば、利益が出る可能性が高いので、あくまで参考程度にするのが良いでしょう。
1年は年の初めで、多くの投資情報が出やすい時期ではあります。また、じっくりと株式投資について考えられる時期ではありますので、年間の株式投資の戦略を練るなどをして1月を過ごすのが良いのではないでしょうか?
まとめ
今回は1月のアノマリーとされている「1月効果」について検証をしてみました。結果としては近年は1月効果は徐々に薄れています。
しかし、1月に限らず書く月のアノマリーについては、多くの投資家が知っているので、知っておく必要はあるでしょう。
ぜひ今回の記事を参考にしていただき、1月だけではなく、他の月のアノマリーについても興味を持っていただければ幸いです。