近年、日本企業で自社株買いが急増している理由について解説!

コラム

From:編集部 小早川

近年、日本企業で自社株買いが急増しています。2024年1年間で上場企業が決定した自社株買いの総額は17兆9920億円でした。

これは2023年の約1.8倍です。ではなぜ近年多くの日本企業が自社株買いを実施しているのでしょうか?

今回は日本企業で急増している自社株買いについて詳しく解説をします。

自社株買いが急増している主な理由は2つ!

近年の日本企業の自社株買いの総額は、以下の通りです。

出典:SBI証券

このグラフは2024年5月20日までのグラフになるので少し古いですが、2024年は2023年の約1.8倍の約18兆円の自社株買いが行われました。

では、なぜ近年、日本企業の自社株買いが増えているのでしょうか。主な理由は3つです。

  • 業績が良く、自社株買いをする余裕がある
  • 東京証券取引所の要請により自社株買いを行っている
  • コーポレート・ガバナンスコードの導入

それぞれの理由を詳しく解説をします。

業績が良く、自社株買いをする余裕がある

円安の影響もあり、近年、日本企業の業績は非常に良いです。業績が良いため、自社株買いをする資金的な余裕があり、自社株買いを行っているのでしょう。

自社株買いを行うメリットは様々ですが、最も大きなメリットは株主に還元ができることです。

自社株買いをすることによって市場に流通する株数が減ります。すると株価が上昇しやすくなるのです。

既存株主への還元といったメリットはもちろんですが、株価が上昇すると、投資意欲が起こり、新たな株主を手にできる機会も増えます。

東京証券取引所の要請により自社株買いを行っている

2023年3月末に東京証券取引所(東証)が、上場会社に対して資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請しました。

株価を意識した経営はまさに株価を上昇させることです。

自社株買いを積極的に行っているのは、東証の要請に従って株価の上昇を狙っている企業が多くなったことが挙げられます。

実際に日経平均株価はここ数年で大きく上昇したのは記憶に新しいところでしょう。

コーポレート・ガバナンスコードの導入

コーポレートガバナンス・コードの導入は、日本企業の自社株買い増加に大きく影響しています。

コーポレート・ガバナンスコードとは、上場企業が守るべき企業統治の指針です。

コーポレートガバナンスコードの中には、資本効率の向上についての項目があり、具体的にはROEの向上が求められています。

ROE(Return On Equity)は「自己資本利益率」と訳され、企業が株主資本をどれだけ効率的に利益に変換しているかを示す財務指標です。

特に2021年の改訂では、資本コストを意識した経営や株主還元の強化がさらに求められ、プライム市場上場企業への要求も厳格化されました。

コーポレート・ガバナンスコードにより、効率的に資本を活かすよう求められていることも自社株買いが増えている大きな理由になるでしょう。

日本企業の自社株買いは増えているが、課題も多い

日本の企業の自社株買いは増えてはいますが、課題も多いです。主な課題は2つです。

  • ROEが欧米企業に比べるとまだまだ低い
  • 持合いに代表される過大な政策保有株式

それぞれの課題について解説をします。

ROEが欧米企業に比べるとまだまだ低い

ROEが高ければ資本を活かして高い利益を挙げていることになります。

日本企業のROEは、近年、上昇はしていますが、まだまだ欧米企業に比べると見劣りするのが現実です。

出典:東証マネ部

このように、まだまだ日本企業は資本を活用しきれていない状況が垣間見れます。

自社株買いが増え、株価が上昇しているのは良いことですが、根本的に資本をうまく活かした経営をしなければ、今後株価の上昇が止まってしまうかもしれません。

持合いに代表される過大な政策保有株式

日本はまだまだ持ち合いに代表される政策保有株式が多いとされています。

政策保有株式に関しては解消をするよう、海外投資家などから要請を受け減ってはいますが、まだまだ多いのが現状です。

株式の持ち合いは、景気が悪い時に経営を安定させるなど良い側面もありますが、経営に緊張感がなくなってしまう悪い側面も多いです。

今後は自社株買いに続き、政策保有株式をどうするかも焦点により上がるでしょう。

2024年に行われた自社株買いについて紹介

2024年は多くの大企業が自社株買いを実施した年でした。

リクルートホールディングス、KDDI、日本郵政など名だたる大企業が自社株買いを実施しました。

概要は、以下の通りです

  • リクルートホールディングス:上限6000億円
  • KDDI:上限3000億円
  • 日本郵船:上限1000億円

発表直後の株価推移をまとめました。

リクルートホールディングス(6098)

出典:GoogleFinance

リクルートホールディングスは2024年7月9日に自社株買いを行う発表をしました。株価は翌日3.6%上昇しました。

KDDI(9433)

KDDIは、2024年5月10日に自社株買いを発表しました。株価は翌日3.7%上昇しました。

出典:GoogleFinance

日本郵船(9101)

日本郵船は、2024年5月8日に自社株買いを発表しました。当日の株価は4.1%上昇しました。

出典:GoogleFinance

このように軒並み大型の自社株買いを発表した企業の株価は上昇をしています。では、セクターごとにどのような自社株買いの特徴があるのでしょうか?

自社株買いのセクターごとの特徴

日本企業の自社株買いには、セクターごとに特徴があります。

例えば、銀行や保険会社などの金融セクターでは、規制資本比率の維持と株主還元のバランスを取りながら、比較的積極的に実施をしています。

2024年にはみずほフィナンシャルグループが16年ぶりに自社株買いを実施すると発表をしました。

また、製造業セクターでは、特に自動車が大規模な自社株買いを行う傾向にあります。

例えば、トヨタ自動車は2024年12月末時点で3億7365万株、1兆267億円を買い入れたと明らかにしました。 

一方、伝統的な内需産業では依然として自社株買いに消極的な企業も多く、セクター間で資本政策の差が鮮明になっています。​​​​​​​​​​​​​​​​

まとめ

今回の記事では、日本企業で急増している自社株買いをテーマに解説をしました。

自社株買いは資本効率を上昇させ、株価を上昇させる効果が期待できます。

日本企業の業績は好調で、自社株買いの余力も多く、今後も多くの企業が自社株買いを行いそうです。

まだまだ、日本企業のROEは欧米企業に比べると、低くく改善の余地はあります。

さらなる自社株買いを行うことにより、欧米企業並みのROEを出す企業が増えるかもしれません。

ぜひ自社株買いに注目をしてみてはいかがでしょうか?