
テクニカルアナリストの向川a.k.チャートの向こう側です。
先日書いた第1弾の半導体株特集が好評だったので、今日はその続きです。
第1弾はこちら。東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、ディスコ、ソシオネクストについて解説しました。
→【迷ったらこれ】日本の半導体株おすすめ5選。特徴や強みなどザクっと銘柄解説。
動画解説はこちらからどうぞ。
今回は製造装置メーカーから材料、電子部品の巨人まで、前回とはまた違った個性の日本が誇る半導体企業5社をピックアップしました。
今回はSCREENホールディングス、SUMCO、ローム、ルネサスエレクトロニクス、村田製作所の5社について。初心者の方にも分かりやすく、それぞれの会社がどんなことをしていて、どんな強みを持っているのか?向川の視点で解説していきます。
それでは始めましょう。
①:SCREENホールディングス (7735) 半導体を「洗う」工程の世界的巨人
SCREEN(スクリーン)ホールディングスは、半導体を作る工程で欠かせない「洗浄装置」で世界トップクラスのシェアを持つ企業です。
半導体は製造工程でわずかなホコリやゴミが付着するだけで不良品になってしまうほどデリケートなものなので、工程の合間に何度もピカピカに洗浄する必要があり、その洗浄する装置を作っているのがSCREENホールディングスです。
最大の強みは、この「洗浄」というニッチながらも絶対に不可欠な工程で、圧倒的な技術力とシェアを持っていることです。ディスプレイ製造装置や印刷関連事業も展開し、多角化も強みですね。
半導体の性能が上がって、構造が複雑になればなるほど高度な洗浄技術が求められます。まさに「半導体の綺麗好き」を支える、なくてはならない存在とも言えるでしょう。
2025年はAIチップや高性能メモリの需要拡大で、洗浄装置の受注が過去最高水準に。TSMCやインテルなど海外顧客との取引も拡大で、円安効果もあって2025年度の業績予想は売上・利益ともに前年比増を見込んでいます。
高性能な半導体の需要が高まるなかで、製造工程はどんどん複雑化・多層化しています。
工程が増えれば、その分「洗浄」の回数も増えるので、SCREENの装置の活躍の場は広がる一方なのです。半導体業界全体の成長と共に、安定した成長が見込まれます。
SCREENホールディングスは半導体製造装置メーカーなので、業界全体の設備投資の動向に株価が連動しやすいです。市場は右肩上がりで伸びているので、他の装置メーカーと同様に力強く成長しているのも特徴ですね。
半導体製造の「綺麗」を支える非常に重要なポジションを独占的に押さえている企業。それがSCREENホールディングスです。あまり派手さはありませんが、半導体が作られる限り必要とされ続ける安定感・堅実性が魅力の銘柄と言えるでしょう。
②:SUMCO (3436) 全ての半導体の「土台」を作る材料メーカー
次はこちらのサムコです。こちらは半導体の基板となる「シリコンウェーハ」を製造している会社ですね。
この円盤状のシリコンウェーハが、全ての半導体の「土台」となり、この土台の上に様々な電子回路が作り込まれていくわけですね。
いわば「半導体のスタート地点」ともいえる存在で、SUMCOはシリコンウェーハで世界トップクラスのシェアを誇っています。
データセンター、EV、スマホ向けの高品質ウェーハで安定した需要があり、2025年はAIや自動運転向けチップの需要増でウェーハの需要が高まっています。
この分野で業界をリードしているのが信越科学ですが、世界2強の一角として高い品質のウェーハを安定供給できる生産能力が強みです。
最先端の半導体を作るには原子レベルで表面がツルツルな超高品質のウェーハが不可欠ですが、その品質要求に応えられる数少ないメーカーの1つと言えるでしょう。
SUMCOは生産を強化しており、特に300mmウェーハの受注が好調で、高価格帯の半導体に使われることも多く、さらに円安による輸出メリットも業績を後押ししています。
一時は市況悪化で厳しい時期もあったのですが、AI・EVの成長とともに再び追い風が吹いている状況で、今後は次世代向けのウエハーにも着手するようです。
また、2025年7月時点でPBR約1.2倍と割安感があり、バリュー株投資家が好みそうな銘柄とも言えますし、長期的にAIやデータセンター、EV向けの半導体市場が拡大していく中で、その土台を供給するSUMCOの役割はますます重要になるでしょう。
半導体業界の大きなトレンドに乗りたいと考えたら、その最も根本のところである「材料」を手がける同社は面白いと思います。
③:ローム (6963) 省エネの切り札「パワー半導体」の雄
ロームは、電気のON/OFFや、直流・交流の変換などを効率的に行う「パワー半導体」に強みを持つ電子部品メーカーです。
次世代の材料である「SiC」という炭化ケイ素を使った次世代パワー半導体で世界をリードする存在です。
省エネ性能が劇的に向上する「SiCパワー半導体」では、材料のウェーハから一貫して生産できる体制を整えているのが最大の強みです。これによって高品質な製品を安定して供給でき、世界中の自動車メーカーや産業機器メーカーから高い評価を得ています。
従来のチップよりも小型で、高効率かつ耐熱性に優れているため、EVや再生可能エネルギーなどの分野で欠かせない技術です。実際、ロームはトヨタやデンソーとの関係も深く、車載向け電源制御チップを中心に開発・供給を進めています。
また、SiCに関しては国内で早期から研究開発を行っており、技術的にも先行者として優位性があります。今後の主戦場は、なんといっても「EV(電気自動車)」。
EVのバッテリーの電力を効率よくモーターに伝えるために、SiCパワー半導体は不可欠な部品であり、EV市場が拡大すればするほど、ロームの活躍の場は爆発的に広がっていくでしょう。
「脱炭素」という世界的トレンドの中心にいるのがロームの強みとも言えますね。欧米の自動車メーカーとの契約も拡大しており、業績は2025年度も増収増益見込みです。
半導体企業ですが、いわばEV関連銘柄とも言えるでしょう。大手自動車メーカーとの提携や、SiC関連の設備投資のニュースなどが株価を動かすポジティブな材料となりやすいです。
財務も堅実で、自己資本比率80%以上、利益率も高め。「EVシフト」「脱炭素」など、これらのテーマ株としても見ておいて面白いと思います。
④:ルネサスエレクトロニクス (6723) 自動車の頭脳「マイコン」で世界をリード
ルネサスエレクトロニクスは自動車の様々な動きを制御する「マイコン」という半導体で世界トップクラスのシェアを持ちます。※マイコン=マイコントローラー
「車の電子頭脳」とも呼ばれる重要な部品で、エンジンやブレーキ、パワーステアリングなど、あらゆる電子制御の「頭脳」としてルネサスのマイコンが活躍しています。
自動車の厳しい品質要求に応え続けてきた実績と信頼性が最大の強みで、なにせ車ですから人の命に関わることです。
一度採用されると長期間使われ続ける傾向があり、これがルネサスエレクトロニクスの安定した収益基盤になっています。
というのも、最近の自動車は安全運転支援システムや電動化によって1台あたりに搭載される半導体の数が急増しています。なので、「走る半導体」とも呼ばれるほどです。
このトレンドはルネサスにとって大きな追い風で、M&Aにも積極的で自動車以外の分野でも事業領域を拡大。
近年では海外のアナログ半導体メーカーを買収するなど、車載だけでなく産業機器、スマート家電、通信インフラ向けなどにも対応する総合半導体メーカーへと進化しています。
世界的な自動車生産の状況にも影響を受けますが、中長期的に見てもEV拡大とともに再評価される可能性が高い銘柄と言えるでしょう。自動車業界の大きな変革を半導体という側面から支える重要な存在です。
⑤:村田製作所 (6981) スマホに数百個!超小型電子部品の巨人
さて、今回ラストに取り上げるのがこちら。
村田製作所は半導体そのものではありませんが、半導体が正しく動くために不可欠な「電子部品」の世界的トップメーカー。特に電気を蓄えたり放出したりする「積層セラミックコンデンサ(MLCC)」という部品で世界シェアNo.1です。
指先に乗るか乗らないかという超小型のMLCCを高品質かつ圧倒的な量で生産できる技術力が強みで、一台の最新スマートフォンには1000個以上ものMLCCが使われています。
電気を安定して供給し、制御するための部品で、あらゆる電子機器に必要不可欠。EV1台に数千個が搭載されるとも言われています。
その電子部品の小型化、高性能化で世界をリードしています。まさに「米粒よりも小さな巨人」と言えるでしょう。日本の技術力は世界トップクラスというのもわかります。
通信向けのモジュール、アンテナ、フィルタなども手がけており、5Gの普及やスマートフォンの高機能化、他にも自動車の電装化など、あらゆる電子機器でMLCCの需要は増え続けています。
特にこれからはスマホだけでなく、データセンターや基地局、EVなど、より高い信頼性が求められる分野での成長が期待されており、世界的なスマートフォンの販売台数や為替の動向に影響を受けやすい銘柄とも言えるでしょう。
また、村田の最大の顧客こそが、皆さんもよくご存知のアップルです。最新のiPhoneには、なんと1000個以上もの村田製作所のMLCCが使われています。
スマホが進化すればするほど必要となる電子部品は増えていき、村田製作所はその部品を超小型化する技術でiPhoneの進化に必要不可欠な存在なのです。
アップルが毎年発表する主要サプライヤーのリストにも村田製作所は常に名を連ねているほどで、両社は切っても切れない重要なパートナーです。
そのため、アップルの新型iPhoneの販売動向や生産計画のニュースが、村田製作所の株価に直接影響することもよくあります。
また、アップルと共に環境への取り組みにも力を入れており、持続可能な社会への貢献という面でも注目されています。
半導体業界の成長を、周辺の「電子部品」という視点から見るときにおすすめの銘柄ですね。スマートフォンの販売台数や為替の動向に影響を受けやすいですが、アップルという巨大な顧客を持ち、さらにEVという新たな成長分野も控えている点は大きな魅力ですね。
まとめ
さて、今回も日本の半導体業界を支える個性豊かな5つの企業を見てきました。
・半導体を「洗う」工程で世界をリードする、縁の下の力持ち SCREENホールディングス
・全ての半導体の「土台」となる材料を作る SUMCO
・EVの省エネに革命を起こすSiCパワー半導体の雄 ローム
・自動車の「頭脳」を握り、クルマの進化を支える ルネサスエレクトロニクス
・iPhoneに不可欠な超小型部品で世界を席巻する巨人 村田製作所
製造装置から材料、パワー半導体に電子部品まで、「半導体関連」という括りの中でもそれぞれが全く異なる専門分野で世界と戦っています。
日本企業の技術は半導体企業から見るととても重要なもので、確かな技術力は世界トップクラスです。
これらの特性を知っていると、「EVの販売が好調」「最新スマホの性能がすごい!」などのニュースが出たときに、「あの銘柄はそういえば・・」なんてことも。
このシリーズが好評であれば、また第3弾、そして半導体以外のシリーズも考えています。参考までに。
では明日もいい波乗っていきましょう!