日本郵船・商船三井・川崎汽船の大手海運株決算について

コラム

From:編集部 黒木

今回は海運大手の決算が出揃ったので大手3社の決算を比較します。

今回比較するのは日本郵船・商船三井・川崎汽船です。

それぞれの決算の特徴について、わかりやすく説明をしますので、参考にしてください。

日本郵船・商船三井・川崎汽船の決算状況

ます、時価総額を見ておくと日本郵船が3兆7767億円と1番大きく、商船三井が3兆5642億円、川崎汽船が2兆526億円です。

日本郵船

日本郵政の決算は、売上高がマイナス10.6%、最終益はマイナス80.2%と低調に終わりそうです。

決算期売上高営業益経常益最終益修正1株益修正1株配
2020.031,668,35538,69644,48631,12961.513.33
2021.031,608,41471,537215,336139,228274.966.67
2022.032,280,775268,9391,003,1541,009,1051,991.30483.33
2023.032,616,066296,3501,109,7901,012,5231,993.70520
予 2024.032,340,000175,000245,000200,000424.4130
前期比-10.6-40.9-77.9-80.2-78.7

商船三井

商船三井の決算は、売上高が0.2%のプラス、最終益はマイナス70.5%に終わりそうです。

決算期売上高営業益経常益最終益修正1株益修正1株配
2020.031,155,40423,77955,09032,62390.921.67
2021.03991,426-5,303133,60490,05225150
2022.031,269,31055,005721,779708,8191,970.20400
2023.031,611,984108,709811,589796,0602,204.00560
予 2024.031,615,00093,000225,000235,000649.1200
前期比0.2-14.5-72.3-70.5-70.5

川崎汽船

川崎汽船の決算は、売上高がマイナス0.3%、最終利益はマイナス84.9%で終わりそうです。

決算期売上高営業益経常益最終益修正1株益修正1株配
2020.03735,2846,8407,4075,26918.80
2021.03625,486-21,28689,498108,695388.50
2022.03756,98317,663657,504642,4242,295.90200
2023.03942,60678,857690,839694,9042,571.00400
予 2024.03940,00087,000135,000105,000445.6250
前期比-0.310.3-80.5-84.9-82.7

決算から読み取れることとは

3社とも非常に低調な決算になりそうですが、この決算から読み取れることについて説明をしていきます。

まずは通期予想と配当の修正を確認します。

川崎汽船は売上を上方修正して営業利益を下方修正しています。純利益は変わりませんでした。

日本郵船は売上と営業利益を上方修正して純利益を下方修正しています。

そして日本郵船以外の2社は増配を発表しています。

続いて通期予想での成長率を見てみます。

売上高は日本郵船が10%の減少、他2社は小幅な変動となっています。

営業利益は日本郵政が40%前後の減少で商船三井が10%の減少、川崎汽船だけ10%増益となっています。

海運で特徴的なのは大手3社の経常利益の変動がすごく大きいことです。

これはオーシャンネットワークエクスプレスという大手3社が持ち分を保有するコンテナ事業からの収益が原因でこれが凄まじく大きく、昨年は1社で6000億程度の収益がありました。

次に営業利益率を見てみると川崎汽船が9.3%と1番高く、日本郵船7.5%、商船三井が5.8%となっています・

この大手3社の中での差はセグメントの比率によるものです。

川崎汽船は自動車や半導体を運ぶ製品物流の比率がすごく高く利益もこのセグメントでほとんど稼いでいます。

商船三井はエネルギーやドライバルクは川崎汽船より利益を出しているのですが、製品物流の比率の差が営業利益の差として出ています。

続いて3Qまでの累積を見てみます。3社全てが、通期予想よりも低い数値となっています。

通期予想に対する経常利益の進捗率も昨年より低くなっています。

これは前期4Qでブレーキがかかっているので今期の4Qは前期よりもプラス成長になる見通しであるといえます。

この時期に通期予想の修正をしているのである程度確度の高い数値であるとは思います。

次に株価を見てみます。

海運株の株価を見る際に是非参考にして欲しいのがバルチック海運指数です。

これはロンドンにある海運取引所の運賃を指数化したもので、指数が高い期間は海運の業績が良くなり低い期間は悪化することが多いです。

この指数の1年前の数値を見てみるとちょうど1番低い位置にあります。

そこから春にかけて反発してしばらく停滞し、9月から12月にかけて間に中東情勢の悪化も挟んで上昇して現在は去年の夏頃の位置で揉み合っています。

これを踏まえて株価を見てみます。こちらは川崎汽船の株価です。

1年前は2700円くらいの位置にありましたが、ここを底値に7月に上昇を加速させて1月に7700をつけています。

ここで注目したいのは最高益だった去年の株価よりも業績が停滞している現在の株価の方がはるかに高い位置にあることです。

これまで海運は利益を出せる期間が限定的で利益を出したとも評価されづらかったのですが、運賃が下がった今期想定よりも落ち込まなかったことから水準が変わってきたのではないかと思います。

川崎汽船と他の2社は株価のチャートは似ているのですが上昇率には大きな差があります。

川崎汽船は1年前から大きく上昇していますが日本郵船と商船三井はそこまで上昇していません。

今後株価がどうなっていくかですがこれはすごく判断が難しいです。

バルチック指数が下落した12月から1月にかけて本来株価は落ち込むはずでしたが中東情勢をきっかけに運賃上昇期待が高まり株価は上昇していきました。

さすがにここからは運賃が実際に上がらないと業績も上がらないので、停滞している指数の動きがどちらかに触れるかがポイントになりそうです。

そこでいつ買うかは一旦置いておいてどこを買うかを話したいと思います。

オーシャンネットワークエクスプレスが昨年のような利益を上げると大手海運のPERは3倍程度にまで下がります。

そして大手3社の中でどこを選ぶかですが、現状の決算では収益力の川崎汽船もしくは割安な商船三井、どっちつかずな日本郵船という印象があります。

短期的には収益力の高い川崎汽船を選びたくなるんですが長期的には、商船三井と川崎汽船の営業利益率の差は縮まる余地があるのではないかなとも思ってます。

実際直近3ヶ月での営業利益率は商船三井が7.2%川崎汽船が9.9%と2.7%の差に縮まってます。

そうなるとPERの低い商船三井が魅力的に見えてきます。

ちなみに日本郵船は他2社よりも事業範囲が広く航空貨物など物流全般を行っています。

現状の決算では選びづらいですが、海運以外の事業が成長してくると海運の一本足打法の他2社よりも安定感があり魅力的になってくるかもしれません。

まとめ

今回は大手海運会社の決算について説明をしました。

海運の決算は非常にブレが大きく、株価の予測が難しいですが、海運事業自体は好調で今後大きな期待ができるはずです。

ぜひ今回の記事を参考にしていただき、会員株に興味を持ってみてはいかがでしょうか。