From:編集部 小早川
先物取引とは、商品や金融資産の将来の価格や金利を指定した価格で取引することを約束する契約のことです。
この取引は、実際の受渡しを行うことなく、将来の価格変動から利益を得ることを目的としています。
しかし、一般的に先物取引については、株式投資や投資信託に比べて情報が少なく、「よくわからない」」といった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は先物取引について説明をします。わかりやすく説明をしますので、参考にしてください。
先物取引とは
先物取引とは、将来の価格を予測して、現時点で取引を行うことをいいます。
先物取引と聞くと、大豆や原油などの商品を対象とした商品先物取引を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、株式など身近な金融商品でも先物取引は使われています。
未来の株価は誰にもわかりませんよね?しかし予想することはできます。
現時点で未来の株価を予想し、将来取引する価格をあらかじめ決めておくことを先物取引というのです。
先物取引は、後で説明するオプション取引に似ていますが、先物取引は将来あらかじめ決めておいた取引を取り消すことはできません。
必ず将来取引を成立させる必要があることも、先物取引の大きな特徴といえるでしょう。
先物取引の仕組み
まずは先物取引の仕組みについて理解していきましょう。先程の取引について理解するために必要なのは5つあります。
- 取引参加者
- 取引所
- 限月
- 証拠金
- 最終受渡または反対売買による決済
わかりやすく説明をしますので、ぜひ参考にしてください。
取引参加者
先物取引には売り手と買い手の2者が取引に参加します。
売り手は将来の特定の期日に対象商品を引き渡す義務を負い、買い手は代金を支払う義務を負います。
取引所
先物取引は取引所で行われ、取引の公正性と価格の透明性が確保されています。
取引所は取引ルールを定め、参加者の信用リスク管理なども行っています。
限月
先物取引には満期日があり、満期を「限月」と呼びます。取引所では複数の限月の先物が上場され、参加者はそれぞれの限月を選んで取引します。
証拠金
先渡し契約の履行を担保するため、参加者は証拠金を取引所に預託する必要があります。証拠金の額は取引所が定めた一定の率で決められています。
最終受渡または反対売買による決済
満期に売り手から実際に商品の受渡しを行うか、反対売買(買い建玉を売り建玉で手仕舞うなど)によって建玉を解消することで決済されます。
先物取引独特の言葉が多いですが、ぜひしっかり覚えるようにしましょう。
先物取引の種類
先物取引には様々な種類がありますが、主な種類は2つです。
- 商品先物取引
- 金融先物取引
先物取引のそれぞれの種類の特徴についてわかりやすく説明をします。
商品先物取引
農産物(穀物、砂糖など)、エネルギー(原油、ガソリンなど)、貴金属(金、銀など)を対象とした取引です。
商品の価格変動リスクをヘッジ(保険)する目的や、価格変動から投機的に利益を得ることを目的とします。
金融先物取引
債券、長期金利、株価指数先物などを対象とした取引です。
金利変動リスクや株価変動リスクをヘッジしたり、金利・株価の変動から投機的に利益を得ることを目的とします。
先物取引の特徴と主なメリット
先物取引には様々な特徴やメリットがありますが、主な特徴やメリットは4つです。
- レバレッジの効果、
- ヘッジ手段
- 流動性の高さ
- 公正で透明な価格形成
先物取引のそれぞれの特徴やメリットについて紹介をします。
レバレッジの効果
証拠金という少額の資金で大口の取引ができ、資金効率がよいことがメリットです。ただし、レバレッジが大きいほどリスクも大きくなります。
ヘッジ手段
銀行などの実需者は将来の価格変動リスクを回避するためにヘッジ取引を行います。金融機関なども金利リスク回避のために活用しています。
流動性の高さ
活発な取引があり、売買がスムーズにできる流動性の高さが特徴です。
公正で透明な価格形成
取引所での取引のため、価格が公正で透明なものになっています。
先物取引のリスクやデメリット
先物取引にはさまざまなメリットがありますが、リスクやデメリットもあります。先物取引の主なリスクやデメリットは4つです。
- 無限大のリスク
- ベーシスリスク
- 信用リスク
- 流動性リスク
それぞれのリスクやデメリットについてわかりやすく説明をします。
無限大のリスク
理論上、先物取引の損失は無限大になる可能性があります。レバレッジの効果が大きいほど、リスクも大きくなります。
ベーシスリスク
先物価格と現物価格の価格差(ベーシス)が変動するリスクです。ヘッジ取引ではこのリスクが存在します。
信用リスク
取引相手の債務不履行による損失リスクです。取引所が信用補完を行うことでこのリスクは軽減されます。
流動性リスク
売買がスムーズに行えず、希望する価格で決済できないリスクです。取引時間外や限月末などで流動性が低下する可能性があります。
先物取引は、リスクが高いものの、ヘッジ手段として重要な役割を果たしています。投機目的の参加者も価格発見機能を担っています。リスクを理解した上で慎重に行う必要がありますが、適切な利用により恩恵を受けられる可能性もあります。
先物取引と似たその他の取引
先物取引はデリバティブ取引の1つですが、デリバティブ取引には先物取引以外にもいくつかあります。
- スワップ取引
- オプション取引
わかりやすく説明をしますので参考にしてください。
スワップ取引
スワップ取引とは、同じ価値のものを交換するという意味です。
スワップ取引において交換するものは将来発生する利息になります。
スワップ取引には、様々な種類がありますが、同一通貨で将来発生する利息が違うものを交換する取引のことを、金利スワップといいます。
固定金利と変動金利の債券から発生する利息を交換すると考えるのがわかりやすいです。
固定金利は、将来発生する利息は決まっていますが、変動金利の場合は、決まっていません。
将来、変動金利の方が固定金利よりも高くなる可能性もありますし低くなる可能性もあります。
このような取引のことを金利スワップというのです。
スワップ取引には、金利スワップのほかに異なる通貨の利息を交換する通貨スワップなどもあります。
オプション取引
オプション取引とは、金融商品をあらかじめ決めておいた値段で将来売買できる権利を現時点で売買する取引のことです。
オプションとは、選択肢の意味になりますので、将来オプションを行使しないということもできます。
しかし、オプションを買うにはお金がかかります。将来もしオプションを行使しなくてもこのお金が戻る事はありません。
オプション取引を株の売買を例にして説明しますね。
例えば、Aという株を1年後に100円で購入することができるオプションを購入したとします。
1年後にA株が120円になっていた場合、オプションを行使すれば100円で買うことができます。
オプションを行使してすぐに売却をすれば利益になります。
しかし、1年後に90円に値下がりしてしまっていた場合、オプションを行使すると損することになってしまいます。
このような時は、オプションを行使しないことができるのです。
身近な先物取引の例
こちらでは、日常生活で使われる身近な先物取引の例について説明します。
例えば、現在100万円の純金の時計があるとします。
どうしてもこの時計が欲しいのですが、現在手元に100万円ありません。
しかし、一生懸命働いて1年後に100万円貯めるとします。
でも、1年後、100万円以上貯めることは無理だとしましょう。
この場合、時計が1年後、100万円以上になってしまうと買うことができません。
そこで現時点で1年後に100万円で時計を買うことを約束するのです。
当然、時計屋さんから見れば1年後までお金が入ってこないリスクがあるので多少の手付け金を払う必要があります。
しかし、手付金を支払うことによって1年後、100万円で時計を買うことができるのです。
もし、1年後に時計の値段が上がっていたら得しますし、値段が下がっていたら損しますよね?
この取引が、デリバティブ取引の中で何の取引であるかもう分かりますよね?
そうです!先物取引です。
このように、日常生活の中でもデリバティブは使われているのです。
まとめ
今回は先物取引について説明をしました。先物取引はわかりづらいですが、理解することによって投資の幅は大きく広がります。ぜひ今回の記事を参考にしていただき、先物取引の理解が深まれば幸いです。