中国の景気対策は効果があるのか、過去の事象と徹底比較してみた!

コラム

From:編集部 小早川

2024年9月下旬、中国当局が相次いで景気支援策を打ち出したことをきっかけに、中国株式市場が急騰しました。

この動きは、投資家の間で大きな注目を集め、中国本土では証券口座開設の申し込みが殺到するなど、活況を呈しています。

この記事では、この現象の背景と影響、過去の景気対策との比較、そして今後の展望について詳しく解説しますので参考にしてください。

株価急騰の経緯

まずは今回の株価急騰の経緯について見ていきましょう。中国は不安定な状況にあり、驚いた方も多いはずです。

当局の景気対策発表

中国株の急騰は、2024年9月24日に当局首脳による景気対策の記者会見が開かれたことから始まりました。

この発表を受けて、投資家の間で期待が高まり、株価の上昇につながりました。

短期間での急激な上昇

9月24日から30日までのわずか5営業日で、上海総合指数は21%も上昇しました。

この急激な上昇は、それまで売られ続けていた株式の買い戻しが主な原動力となりました。

バリュエーションの回復

景気不安を背景に、上海総合指数は2021年2月に付けた直近高値から40%も下落していました。

上海上場の大型株で構成する上証50指数のPER(株価収益率)は、2021年2月の14倍台から2024年9月23日には8.5倍台まで落ち込んでいましたが、この急騰によってバリュエーションの回復が見られました。

投資家の動向

この発表を受けて、投資家はどのような動きをしたのでしょうか。

個人投資家や証券会社の対応について解説をします。

個人投資家の殺到

株高の波に乗り遅れまいと、多くの個人投資家が動き始めています。

中国本土のメディアによると、オンラインでの証券口座開設の申し込みが殺到し、一日あたり数千件ずつ口座が増えている証券会社もあるとのことです。

証券会社の対応

国慶節(建国記念日)の連休中にもかかわらず、複数の証券会社が24時間体制で口座開設の申し込みに対応しています。

これは、投資家の熱意と市場の活況を示す象徴的な出来事といえるでしょう。

過去の株高との比較

今回の株高と過去の株価について比較をしてみましたので、ぜひ参考にしてください。

2014年から2015年の株高

2014年11月、中国人民銀行が金融緩和策を開始したことをきっかけに、中国株式市場は急騰。

上海総合指数は、2014年11月21日から2015年6月12日までの約7ヶ月間で2.1倍になりました。

しかし、2015年の夏以降、当局による信用取引規制への警戒や経済指標の悪化により、株式相場は崩れ始めました。

同年8月の人民元切り下げを受けて、いわゆる「チャイナショック」につながっていったのは記憶に新しいところでしょう。

現在との違い

10年前は当局が株価急騰を警戒する動きが上昇相場を短命に終わらせた面がありますが、今回は当局の市場支援策の「本気度」が異なるという見方があります。

当局の市場支援策

当局のマーケット支援策についてまとめましたので、参考にしてください。

中央政治局会議での方針

2024年9月26日に開かれた中国共産党中央政治局会議では、「資本市場を活性化させ、中長期ファンドの市場参入を強力に誘導する」という方針が強調されました。

証券監督管理委員会などが「中長期資金の市場参入促進に関する指導意見」を発表し、市場システムの改善や上場企業の質向上などを奨励しています。

これは、中長期資金の市場参入に対する初めての試みであると話題になりました。

経済環境の変化

10年前と比べて、中国の経済成長の段階が変わっています。かつての年率7%成長から、現在は4%台に低下し、今後もさらなる鈍化が予想されています。

不動産市場や消費を刺激するために、より強力な財政政策が必要との声がある一方で、財政支出の拡大は債務問題を深刻化させる可能性があるという懸念もあります。

今後の展望と課題

今後の展望と課題についてまとめましたので、参考にしてください。

当局は、高成長の維持よりも、時間をかけて緩やかな経済成長を維持しようとする姿勢を続ける可能性があります。

これは、長期的には持続可能な経済発展につながる可能性があり、長期間の株高を誘引するものになるかもしれません。

しかし、財政支出の拡大は、短期的には経済を刺激する効果がありますが、長期的には債務問題を深刻化させるリスクがあります。

当局はこのバランスを慎重に取る必要があるでしょう。

10月12日に具体的な政策を発表

9月の段階では、何かしらの経済対策を行うとの発表でしたが、10月12日になって具体的な政策が発表されました。

内容は国債発行を「大幅に増やす」とのものです。

低所得者への補助金支給や不動産市場支援、国有銀行の資本補充に充て、低迷する経済成長の回復を後押しする姿勢を明確にしたのです。

この発表によって、もう1段大きな株高があるかもしれません

まとめ

中国株式市場の急騰は、当局の景気支援策への期待と、これまでの株価下落による割安感が相まって起こっています。

しかし、10年前の経験を踏まえると、持続可能な市場の成長には、実体経済の回復と健全な市場環境の整備が不可欠です。

投資家は、短期的な急騰に惑わされることなく、長期的な視点で中国経済と市場の動向を注視する必要があるでしょう。