第一弾:ドル円158円!円安でピンチ?円高の方がいい?悲観的な経済オンチさんへ。

コラム

テクニカルアナリストの向川a.k.aチャートの向こう側です。

日本はGWで連休スタート。今日は月曜ですが相場は休みですね。

為替は円安進行中、日経先物も上げてるので、もし今日相場がオープンしてたらぶち上げでスタートしてたでしょう。今週は金曜も祝日で、相場は火水木曜の3日間しかないので、やや閑散としそうです。

さて、今日はここ最近、世間を賑わせている「円安」について正しい考え方を解説します。みんな間違った認識をしすぎているので、もう一度ここではっきりさせておきましょう。

円安進行!ドル円は160円を目指す動きに

最近はテレビやニュースを見ると円安についてよく議論されてます。

出典:ヤフーニュース

まず多くの方が勘違いしているのは、「円安=円が弱い」という勘違いです。この”弱い”という言葉を読み解くと、日本がダメダメで、貧乏で、海外の後進国と比べても力が落ちていて、もうやばいくらい困窮している貧困国になっているという論調です。

とりあえずそんな人たちを正座させて、冷水ぶっかけたいくらいですが、そもそも円安=日本経済が弱いではないです。メディアの偏向報道に流れないことが大事。

まず話の出発点として、為替の価格はどうやって決まるかご存知ですか?今だとドル円158円くらいですが、この価格がどうやって決まるかです。

これは誰かが意図的に決めてるわけでもなければ、国の経済力が弱いから安くなるのではなく、為替の総量。もっと言えばその国の金融政策で決まります。

今、日本はずっと金融緩和をやってます。つまり円を大量に擦って、量を増やしてるわけです。「金融を緩和」するとは、水道の蛇口を全開にひねって、水を大量に出してるイメージです。これが今の円の状況ですね。

一方で、ドルは金融引き締めをやってきました。引き締めとは、日本がやってる緩和とは反対で、水道の蛇口を絞って、水が出る量を減らしてるイメージです。これが今のドルの状況です。(が、米国政府は今もう市場に出回ってるドルを増やしてるので、厳密には金融緩和が始まってるのですが。だから経済も強い、けど利下げできない。これはまた別問題なので改めて解説する。)

つまり、ドル円の為替相場は何で決まるか?それは円とドルの総量で決まります

そして、それぞれ円は市場に大量に出回っていて、ドルは市場から引き上げられたわけで、分かりやすくいうと、市場に出回ってる円の総量とドルの総量を割り算すると、今のドル円レートになるということ。それ以上でもそれ以下でもないです。

これを例えるなら、円は100円均一で売ってるボールペンみたいなもので、市場に大量に出回っているため価格は安くなるし、ドルはモンブランのペンみたいなもので、希少価値があるから高くなるというわけです。(だからといって日本経済が100円のペンかというと、そうゆうことではなく、あくまで比喩)

ぶっちゃけ、円安になってどうなった?

次に、円安になってどんな弊害があったか?考えてみましょう。

前提として、こうした議論をゼロor100で考えるのはナンセンスで、白黒つけれる問題じゃないです。どんな政策にしてもメリット・デメリットはあるもので、国民全体としてそれぞれどっちの比重を受け入れるか?がポイントです。

で、円安になってどうなりましたか?

株価:日経平均4万円突破。34年ぶりに高値を更新。バフェットなど世界的な投資家も注目。まだまだ上昇余地もあり

税収:昨年の日本の税収は71兆円。前年度よりさらに4兆円も増えて3年連続で過去最高。税収が70兆円を超えるのは歴史上初めて。国も儲かりまくり。

雇用:もっとも重視されるのは失業率だが、24年1月の完全失業率は2.4%。コロナ前以来でもっとも低水準で、これも歴史的な低さ。

給与:今年の新社会人は大幅に初任給がアップ。正社員や非正規の人たちもバブル期以来の賃上げに成功。

これらは「円安だから達成できたこと」です。

また、対外純資産(とは、日本企業や個人、政府が海外に持つ資産のこと)はは400兆円超えで世界一位。これも円安効果で増えまくりです。(とはいっても米国の国債を買ってて売りたくても売れないのですが。米国の意向もあって売らせてくれない。)

一方で、円安になることの弊害は?

基本的に「円が安い」ことはいいことで、円安・円高はどの視点から見るかが大事。これは海外の視点から見ると分かりやすいのですが、海外から見て「円が安い」から、たくさん買ってくれるわけです。

逆に円高になると、「円が高くなる」わけですから、海外の人からしたらコスパ悪くて買ってくれないわけですよ。高く買うより安く買えたほうが、私たちも嬉しいですよね?

で、日本は製造業の国です。なぜ今、円安で経済も株価も絶好調か?それは日本の製品やサービスが海外で売れるからですよ。

出典:四季報オンライン

法人企業統計によれば、金融・保険業を除く全規模・全産業の売上高は2023年4~6月に前年比5.8%増、7~9月に同5.0%増になってます。

経常利益は4~6月前年比11.6%増、7~9月同20.1%増と2桁増、かつ増加ペースは加速するなど、絶好調です。

日銀の発表によれば、2023年度の全規模・全産業の経常利益見込みは昨年12月時点の調査で前年度比4.0%増。前回9月調査時点の減益予想から6.8%ポイントの大幅上方修正です。

つまり、、、

円安によって日本経済は絶好調!

なのです。

円安のデメリットは?

一方でデメリットも当然あります。ゼロor100ではないですから、しっかりとデメリットも見なければいけません。

海外に商品を売ってる企業は、円が安いから海外の人はコスパよく買ってくれる一方で、海外から国内に輸入してる企業はダメージが大きいです。こうした企業は円が高い方が商品も高く売れるわけですから、円高の方がメリットがあります。

円安で儲かるのはトヨタなどの海外メインで売ってる製造業で、円高で儲かるのはニトリなどの材料を海外で買ってきて日本国内に売ってる会社ですね。

また、日本はエネルギー資源がないので、基本的には海外から買ってます。原油も中東から買ってるし、天然ガスなどもそうですね。そもそも日本のエネルギー自給率は10%くらいで、残り9割は海外からです。

ですので、当然ですが円安になるとこれらのコストが上がるため、インフレになりやすいです。物価が上がっていくのがインフレでしたね。

ただ、感覚ではなく実際の数字で見るのが大事です。日本の物価上昇率はどれくらいか知ってますか?

たった2%です。2022年に2.5%になり、2025年以降も2%台が続くとあります。

が、、、そもそも「2%」は世界標準であり、日本はずっとずっとずーっっっっっっっっとデフレに悩んでいました。デフレとはインフレの反対で、モノの値段が下がったままのことです。

つまり、円安によって起こる弊害はインフレですが、まだまだインフレになってないですし、2%のインフレ率は10年前から目指していたゴールなわけです。

やっとゴールを達成したくらいでインフレがやばいとか、何を言ってるのか意味がわからないレベルです。

そもそも1980年台のバブル期は超超超円安です。

そして私が「円安悲観」をする人に言いたいのは、日本が世界最強だった1980年台、なぜ日本経済が強かったのか?説明してほしいです。

これは1984年から2024年までのドル円チャートです。

ご覧のように一番左側の1984年はドル円は250円を超えてる。250円ですよ?

このデータには残ってないが、その前はさらに円安で、ドル円360円時代です。超超超円安です。

これはダメだったのか?いいえ、そうじゃないですよね。

日本経済が世界で最強だった頃は超円安でした。今と比べ物にならないほど円が安かった。

だから東芝や日立、松下電器などが世界で商品を売りまくっていた時は、もちろん商品が良かったのもあるけれど、そもそもが超円安だから売れまくったのです。

しかし、バブル崩壊しますが、これは「急激な利上げによる円高」と「不動産の総量規制」です。バブル崩壊はこの2が原因だったのです。それから日本は急激なデフレになり、今までに至ります。

円安は正解。ではこの円安戦略のゴールは?

ここまでを整理すると、日本のような製造業メインの国は、絶対に円安の方がメリットが大きい。それは今の株価や税収、給与アップや失業率の低さを見ても明らかだし、企業の業績を見ても明らか。

では、このまま進んでいいのか?やはり問題はインフレが長く続くことで、今の2%の適正水準から3%、4%、5%と大きくなっていくと危険です。それが今の米国や欧州ですね。

ただ、まだまだそうなる姿は見えないし、こないだファミマが商品の値下げを発表したようにこの流れに逆行する企業も出てくるし、正直インフレなんて私たちの生活では微々たるものです。

みんな話の論点が違うのです。円安が悪ではなくて、今のこの円安ボーナスタイムに関わらず、メイドインジャパンで世界に売りまくるものがないのが問題の本質なのです。

今、世界はサービス業がメインでしょ?だから米国のアップルやマイクロソフト、Googleなどが世界の覇権を握ってるわけです。でもここでは米国に絶対に勝てないです。

一方で電気自動車などのエコ・クリーンエネルギー系も中国に勝てないでしょ。なんで日本中の田舎にソーラーパネルが増えてるか知ってますか?あれほとんどは中国製ですからね。政治家もあれに補助金出してるんですよ。

さらにバイデン政権もリベラル左派政権ですから、おもっきりこっち系の政権です。ここでは米中に勝てないんですよ。

だから、こうゆうのではない、新しい産業を勃興させること。これに尽きます。

ポイントは「メイドインジャパン」でやることです。日本発の日本企業で、かつてのウォークマンのように世界に売りまくる商品サービスです。これがないのが問題の本質なんですよ。

例えば、私はトヨタ式のカイゼンなんかも、世界で通じる英語としてあるわけで、これとか国策として1,000億円くらいのパッケージにして海外に売りまくればいいと思うんですよ。

あとはアダルトビデオもそうですね。「japanese」というカテゴリがあるほど日本のAVは世界で人気です。これとかも無修正版が世界に流れまくってるわけで無法地帯ですよ。DMMあたりにどかっとお金を入れて、世界からサブスク課金で純正の日本版AVサイトみたいにして売りまくればいいんですよ。もちろん無修正で。

大麻もそう。世界でグリーンラッシュが起こって解禁され、数千億から兆円規模のビジネスなわけですよ。日本の農業も最先端で、その技術を世界に売りまくるとかもいいと思うんですよね。

またはこれからマジックマッシュルームが解禁されたり、幻覚剤のLSDも精神作用があることで商用化される流れです。大麻なんて周回遅れで、世界はそうなってるわけですよ。

またはロボットですが、海外の人が作るとどうしてもターミネーターみたいなロボットができるけれど、日本人の精神性で作るからドラえもんみたいな心の通ったロボットが作れると思います。

少子化・高齢化の問題は先進国の悩みで、日本だけではないわけで、ただ日本が世界でもっとも早くこの壁にぶつかってるわけですよ。であれば、さっさとロボットベンチャーにどかっとお金を入れて作らせるとかやればいいんですよ。

または漫画もそう。MANGAは世界標準で、鳥山明が亡くなった時に世界中で追悼の声が上がったことからもわかるように、日本が世界に売りまくれる漫画は強烈なコンテンツですよね。

こうしたメイドインジャパンで、海外に売りまくれるビジネスをもっと誕生させることです。そのためには多少の問題が起こるのは許容して、ガンガン進めてガンガンお金を入れて、できる人には若手でも年収1億とか用意したり、できない人はすぐクビにしてもっと雇用を流動化することです。んで、減税して、もっと現役世代の手取り収入を増やして、経済がもっと回転することです。

まとめ

長くなったのでまとめます。

円安ダメの風潮に流れないことです。基本的にテレビやニュースのコメンテーターは経済オンチですし、カンペ通りに話してるだけです。

また、テレビメディアは基本的に偏向報道してます。彼らは基本的には金融引き締めで、増税路線で考えていて、財務省のレクチャーも入っているので円安=悪で報道します。

でも実際に2010年前後の円高の時は円高=悪と報道するので、その程度の知識レベルってことです。

円安をやめて円高になったらどうなるか?悪夢の2010年前後は日経平均1万円割れて8000円くらいですよ。為替はドル円80円くらいで超デフレです。吉野家の牛丼が280円で、どうやって経済成長するんですか?給料増えるんですか?と冷静に突っ込みたいくらいです。

今の円安の流れが変わるとしたら、米国が急激な利下げをするか、日本が急激な利上げをするかですが、どちらも今のところ気配はありません。

先日のトランプと麻生さんの対談からわかるように、もし米国の大統領選挙と日本の総裁選で、どちらもトップが変わることになれば、話は変わるかもしれません。

出典:読売新聞

米国は急激なドル高で、日本の製造業が絶好調の一方で米国の製造業はピンチです。そして、トランプはその界隈から支持されています

よって、トランプが大統領になればドル安・円高に戻すことが考えられるし、岸田総理を考えると、今回の裏金騒動で安倍派や二階派を解体したことからわかるように、次の総理が麻生一派から出てくることが考えられます。そのための訪問もあるのかなと。

そうなれば基本的に麻生さんは金融引き締め路線ですから、利上げや増税路線です。また10年前の日本に逆回転して、株価暴落、デフレ、円高、給料増えない社会に戻ることを今から危惧しています。

私は金融トレーダーとして世界の情報に触れていますが、株価と政治は深く関係していますし、国際政治や地政学なんかもかなり密接しています。

今年は各国の重要な選挙もたくさんあるので、こうした俯瞰した視点からも金融相場を見ていけるように情報をアップデートしていきましょう!