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From:編集部 小早川
2025年1月に相次いで大手テック企業の決算が発表されました。
今回はマイクロソフト、メタ、アップルの決算について分析をしましたので、ぜひ参考にしてください。
マイクロソフト
決算期 | 売上高 | 営業益 | 税引前益 | 最終益 | 修正1株益 | 1株配 | 発表日 |
2023.12 | 62,020 | 27,032 | 26,526 | 21,870 | 2.93 | 0.75 | 2024-01-30 |
2024.03 | 61,858 | 27,581 | 26,727 | 21,939 | 2.94 | 0.75 | 2024-04-25 |
2024.06 | 64,727 | 27,925 | 27,250 | 22,036 | 2.95 | 0.75 | 2024-07-30 |
2024.09 | 65,585 | 30,552 | 30,269 | 24,667 | 3.3 | 0.83 | 2024-10-30 |
2024.12 | 69,632 | 31,653 | 29,365 | 24,108 | 3.23 | 0.83 | 2025-01-29 |
前期比 | 12.3 | 17.1 | 10.7 | 10.2 | 10.2 | (%) |
マイクロソフトの2024年第2四半期(10-12月期)決算が発表され、全体の業績は堅調ながらも、主力事業であるクラウドサービス「Azure(アジュール)」の成長率に減速傾向が見られました。
決算の主要ポイントとしては、全社の売上高が696億ドルと前年同期比12%増を記録し、市場予想の687億8000万ドルを上回りました。
しかし、注目されていたアジュールの売上高成長率は31%にとどまり、アナリスト予想の31.8%をわずかに下回る結果となりました。
特に投資家の関心を集めたのは、今後の見通しです。
エイミー・フッド最高財務責任者(CFO)は、次期第3四半期(2025年1-3月期)のアジュール事業の成長率を31-32%と予想しましたが、これは市場予想の33%を下回るものでした。
この保守的な見通しを受け、同社の株価は5%超の下落を記録しました。
AI事業における展開についても重要な動きがありました。
サティア・ナデラCEOは投資家向け電話会見で、「AIがより効率的で利用しやすくなるにつれて、需要は指数関数的に高まるだろう」と強調。
実際に、第2四半期におけるAIのアジュール成長への寄与は13%ポイントと、前四半期の12%ポイントから上昇を見せています。
一方で、積極的な設備投資も目立ちます。同社の設備投資額は226億ドルに達し、アナリスト予想の209億5000万ドルを大きく上回りました。
この投資規模に対し、ザックス・インベストメント・マネジメントのブライアン・マルベリー氏は「投資資本に対する明確な収益化モデルのロードマップを望んでいる」と指摘しています。
競争環境の変化も注目されています。マイクロソフトは中国の新興企業ディープシークのAIモデル「R1」をアジュール上で展開することを発表。
これに関してナデラCEOは、ディープシークとの協力を含め、オープンAIとのパートナーシップの下でGPTモデルの価格低減に向けたソフトウェアの最適化に取り組んでいると説明しています。
事業の具体的な成果として、大口顧客との新規契約を示す「コマーシャル・ブッキング」指標は67%の伸びを記録。
この成長の大部分は、オープンAIとの大規模な新規アジュール契約によるものとされています。
なお、オープンAIは最近オラクルとの新たなデータセンター契約を結びましたが、マイクロソフトは依然としてオープンAIのモデルの商業利用に関する主要な権利を保持しています。
インテリジェントクラウド部門全体の売上高は255億4000万ドルとなり、市場予想の257億6000万ドルをやや下回る結果となりました。
メタ・プラットフォームズ
決算期 | 売上高 | 営業益 | 税引前益 | 最終益 | 修正1株益 | 1株配 | 発表日 |
2023.12 | 40,111 | 16,384 | 16,808 | 14,017 | 5.33 | 0 | 2024-02-01 |
2024.03 | 36,455 | 13,818 | 14,183 | 12,369 | 4.71 | 0.5 | 2024-04-24 |
2024.06 | 39,071 | 14,847 | 15,106 | 13,465 | 5.16 | 0.5 | 2024-07-31 |
2024.09 | 40,589 | 17,350 | 17,822 | 15,688 | 6.03 | 0.5 | 2024-10-30 |
2024.12 | 48,385 | 23,365 | 23,553 | 20,838 | 8.02 | 0.5 | 2025-01-29 |
前期比 | 20.6 | 42.6 | 40.1 | 48.7 | 50.5 | (%) |
メタは2024年第4四半期において、市場予想を上回る売上高を達成しました。
しかし、2025年第1四半期(1-3月)の見通しについては、売上高予想を395億から418億ドルとし、アナリスト予想の平均417億2000万ドルを下回る可能性を示唆しました。
メタの事業展開において特に注目すべきは、AI関連への大規模な投資計画です。
マーク・ザッカーバーグCEOは2025年のAIインフラ構築に600億から650億ドルを投資する計画を発表しました。
これに伴い、2025年の総経費は1140億から1190億ドルになると予想され、2024年の950億ドルから大幅な増加が見込まれています。
ユーザー基盤については、メタのアプリを1日に利用するユニークユーザー数(ファミリー・デイリー・アクティブ・ピープル:DAP)は、前年比約5%増の33億5000万人に達し、着実な成長を示しています。
AIに関する戦略面では、ザッカーバーグCEOは「メタAIは既に他のどのアシスタントよりも多くの人に利用されている」と述べ、サービスの規模がもたらす長期的な競争優位性に自信を示しました。
また、中国のDeepSeekによる低コストAIモデルの登場を受けて、オープンソース戦略の重要性を強調し、「世界的にオープンソースの標準が生まれる」との見方を示しました。
しかし、これらの積極的な投資計画には課題も存在します。
メタはAI開発やメタバース技術への多額の投資費用を、主にソーシャルメディア広告事業からの収入に依存しているため、第1四半期の売上高見通しは投資家に新たな懸念を投げかけることとなりました。
イーマーケッターの主席アナリスト、ジェレミー・ゴールドマン氏は、第4四半期の好調な業績は広告収入の強さを示すものの、2025年の最大の焦点は600億から650億ドルのAIインフラ投資が実際にどのような成果をもたらすかにあると指摘しています。
このように、メタは堅調な業績を維持しながらAI分野への大規模投資を進めていますが、その投資効果や収益化への道筋については、市場が注視している状況が続いています。
アップル
決算期 | 売上高 | 営業益 | 税引前益 | 最終益 | 修正1株益 | 1株配 | 発表日 |
2023.12 | 119,575 | 40,373 | 40,323 | 33,916 | 2.18 | 0.24 | 2024-02-01 |
2024.03 | 90,753 | 27,900 | 28,058 | 23,636 | 1.53 | 0.24 | 2024-05-02 |
2024.06 | 85,777 | 25,352 | 25,494 | 21,448 | 1.4 | 0.25 | 2024-08-01 |
2024.09 | 94,930 | 29,591 | 29,610 | 14,736 | 0.97 | 0.25 | 2024-11-01 |
2024.12 | 124,300 | 42,832 | 42,584 | 36,330 | 2.4 | 0.25 | 2025-01-31 |
前期比 | 4 | 6.1 | 5.6 | 7.1 | 10.1 | (%) |
第1四半期の総売上高は1243億ドルと、市場予想の1241億2000万ドルをわずかに上回りました。1株当たり利益は2.40ドルで、こちらも市場予想の2.35ドルを上回る結果となりました。
製品別の販売状況を見ると、以下のような特徴が見られました。
1. iPhoneの売上高は691億4000万ドルと、アナリスト予想の710億3000万ドルを下回りました。
2. MacとiPadは好調で、Macの売上高は89億9000万ドル(予想79億6000万ドル)、iPadは80億9000万ドル(予想73億2000万ドル)と、いずれも市場予想を上回りました。これは新しいチップ搭載による更新需要が寄与したとされています。
3. サービス事業も堅調で、収入は前年比13.9%増の263億4000万ドルとなり、市場予想の260億9000万ドルを上回りました。
地域別では、特に中国市場での業績が注目されました。
中国での売上高は185億1000万ドルと、前年同期の208億2000万ドルから減少し、アナリスト予想の213億3000万ドルを下回りました。
ティム・クックCEOによると、中国での減収の約半分は再販業者の在庫量の変化によるものとされています。
今後の見通しについて、2025年第2四半期(1-3月期)は以下の予想が示されました。
売上高は1桁台前半から半ばの水準での増加を見込んでいます。
売上高総利益率は46.5-47.5%と予想され、上限は市場予想の47.01%を上回っています。
特筆すべき点として、AI機能「アップルインテリジェンス」の展開状況があります。
クックCEOは、この機能を展開した市場でiPhone販売が好調だったことを強調しました。
4月にはフランス語やドイツ語などの新言語でのサービス提供を予定していますが、中国での展開時期は未定となっています。
市場の反応として、将来的なAI機能の展開によるiPhone販売の回復期待から、決算発表後の時間外取引で株価は3.14%上昇しました。
アナリストからは、特に中国でのAI機能展開が実現すれば、業績改善が期待できるとの見方が示されています。
このように、アップルは一部製品の販売や地域での苦戦はあるものの、サービス事業の成長やAI機能の展開による将来的な成長への期待が高まっている状況です。