
テクニカルアナリストの向川a.k.aチャートの向こう側です。
前回、日本の防衛株についてまとめました。第1弾だったので主力企業を4つご紹介しましたが、今回はその続きです。第2弾ということで、日本製鋼所、東京計器、日油、新明和工業を取り上げます。
前回の記事はこちら
→【第1弾】日本の防衛株銘柄4選。地政学リスクが高まり世界的な注目セクター【三菱重工、川崎重工、IHI、三菱電機】
前回は重工大手と言える企業でしたが、これらが防衛セクターの「顔」だとすれば、今回の企業はそれぞれの専門分野で不可欠な技術を提供し、防衛装備品の性能を支える「骨格」や「神経」のような存在です。
高い専門性を持つ企業にも注目ですね。それでは、始めましょう。
①日本製鋼所 (5631)火砲・特殊鋼技術で世界に名を馳せる老舗
1907年の設立以来、日本の鉄鋼業・機械工業をリードしてきた名門企業です。
特に大型の鋳鍛鋼品や、特殊鋼の製造技術に優れていて、その技術は発電所の部材から防衛装備品まで、社会の根幹を支える様々な製品に活かされています。
同社は戦車や護衛艦に搭載される大砲の製造で国内トップです。というより唯一無二の存在で、長年培ってきた高度な冶金技術と精密な加工技術は日本の防衛力の象徴の一つと言えます。
他にもミサイルの発射装置や潜水艦の部材など、高い圧力がかかる過酷な環境下で使用される特殊な鋼材も手掛けています。これらの素材がなければ、高性能な防衛装備品を作ることができません。
その他にも防衛省向けの装甲板や、魚雷の部品なども供給しているようです。
日本製鋼所の防衛技術は、簡単に真似できない「オンリーワン」のものが多くて、高い参入障壁があるのも特徴です。防衛装備品の性能向上において、日本製鋼所の技術が不可欠。
防衛費の増額に伴って、新しい火砲の開発や既存装備の改修などで受注が増える可能性も。
他にも半導体製造装置の精密部品やエネルギー分野のタービン部品、プラスチック成形機も手掛けてて、事業のバランスも魅力的です。2024年度の売上高は約2,000億円、営業利益率は5~6%で安定感も。
ただ、鉄鋼業界は原材料コストや為替の影響を受けやすいため、為替の動きには注意です。しかし、長年の実績と信頼は他を比べても圧倒的で、今後も成長が期待されます。
②東京計器 (7721)航海・航空の「目」と「頭脳」を担う精密機器メーカー
896年創業の日本初の計器メーカー、それが東京計器です。
「計器」という名の通り、船舶や航空機、油圧機器、通信機器など、様々な分野で精密な計測・制御技術を提供しています。特に、船舶用の航海計器では世界トップクラスのシェアを誇ります。
その航海計器システムですが、護衛艦や潜水艦に搭載される羅針盤や、自動操舵装置、レーダーといった航海システムの中核で、艦船が安全かつ正確に航行するための「目」や「神経」となる重要な役割です。
また、航空自衛隊の航空機向けにもフライトデータレコーダーや各種センサー、表示装置などを供給しており、航空機の安全運航とミッション達成に欠かせない製品となっています。
防衛以外にも事業を展開していて、気象観測機器や産業用センサーも手掛けていますが、売上の3~4割が防衛関連。2024年度の売上は約500億円、営業利益率は7%程度。他社と比べるとコンパクトながら利益率はまずまず。
艦船やミサイルのセンサーで国内トップクラスの同社は、これからも期待できそうです。何よりも長年の経験に裏打ちされた極めて高い信頼性が強み。
防衛の現場は一瞬の判断ミスも許されませんが、同社の精密な計器は隊員の人生を左右します。防衛装備の近代化・ハイテク化が進む中で、より高性能なセンサーや制御システムの需要は高まる一方でしょう。
日本計器のビジネスチャンスは拡大していくと思われます。船舶用、航空用ともに高いシェアを持つため、事業基盤が安定している点も魅力です。
③日油 (4403)火薬から宇宙まで、化学技術で安全保障を支える
油脂化学メーカーである日油ですが、火薬や爆薬、医薬品、食品、化成品など事業領域は広いです。特に化薬事業においては日本のリーディングカンパニーと言っていいでしょう。
ミサイルのロケット燃料や、砲弾の炸薬、魚雷の爆薬などを製造がメイン事業で、これらは防衛装備品の「心臓部」です。JAXAのH-IIA/Bロケットやイプシロンロケットの固体ロケットブースターの推進薬も手掛けており、技術力は宇宙開発の分野でも発揮されています。
その他にもエアバッグを膨らませるためのガス発生剤も同社の得意分野で、この技術は緊急脱出装置などにも応用されているようです。
日油が手掛ける製品は、まさに「縁の下の力持ち」で、派手さはありませんが日本の防衛力と宇宙開発に不可欠な基盤技術を提供しています。
ミサイル防衛能力の強化や、国産長射程ミサイルの開発などの政府の方針は、同社にとって追い風。また、化薬事業は安全管理が極めて厳しいため、新規参入がとても困難な分野です。よって、安定した収益が見込めるのも強みですね。企業全体の成長性も期待できる銘柄です。
2024年度の売上は約3,000億円、営業利益率は8%程度と堅実。
医薬品や化成品、化粧品原料、食品添加物、産業用化学品なども利益を上げていて、主力以外の事業も好調。企業全体の成長性も期待できる銘柄です。
防衛と化学のシナジーが魅力。配当も安定で、中長期投資にも相性が良さそうですね。
④新明和工業 (7224)世界に誇る飛行艇技術、救難の翼を担う
戦前の川西航空機をルーツに持つ輸送機器メーカー、それが新明和工業です。
現在はダンプトラックなどの特装車、航空機、産機システム、駐車場設備など、幅広い事業を展開しており、特に飛行艇の開発・製造技術では世界的に見てもユニークな存在です。
強みは救難飛行で、海上自衛隊が運用する救難飛行艇「US-2」を開発・製造しています。荒れた海上でも離着水できる世界最高水準の性能で、洋での捜索・救難活動に不可欠な装備品です。
民間航空機の部品やごみ収集車などの特装車なども手掛けているようですね。
米国ボーイングや欧州エアバスなど、世界の航空機メーカー向けに主翼の一部や胴体パネルの部品なども供給しており、航空機製造技術が高く評価されています。
同社のUS-2飛行艇は、海外(特に広大な海洋を持つ国々)からの関心も高く、輸出への期待も高まっています。インドなどが導入を検討するなど、今後もグローバルな事業展開が期待されています。
また、民間航空機向けの部品事業も成長が見込まれ、特装車事業も国内で高いシェアを持つなど、安定した収益基盤を持っている点も強みです。
まとめ
今回は独自の技術で日本の防衛を支える中核企業4社を解説しました。
それぞれが特定の分野で代替の難しい強みを持っており、大手の重工とはまた違った魅力を持つ銘柄たちです。次回は、さらにニッチな分野で活躍する企業や、サイバーセキュリティなど、新たな防衛領域に関連する企業なども見ていきたいと思います。
それではまた!