
テクニカルアナリストの向川a.k.aチャートの向こう側です。
関税問題によって相場が乱高下しています。昨日の全面安から一転、今日は全面高になりました。何があったか?
昨日、トランプ前大統領は関税発動の一部を「90日間の猶予付き」に変更する方針を打ち出しました。これにより、市場は一時的にリスクオンムードへと傾き、株高・円安・金利上昇のトリプルセット。
日経平均は2,800円も上昇しましたが、マーケットの“空気”は本当に変わったのか?今日もチャートの向こう側を考察していきましょう。
株式市場:関税一時停止で“買い戻し”主導の急騰
前日の暴落からわずか1日での急騰劇でした。
今日の日経平均は2,894円高、+9.13%の34,608円で引けました。TOPIXは+8.09%の2,539、グロース250は+7.08%の613でした。
金融・輸出・ハイテク中心にリバウンドし、大型株の上昇や先物の買い戻しなどで今日は33セクターすべてで上昇。節目の34,000円も超えました。上昇幅は歴代2位!
プライム市場の99%の銘柄が上昇する相場になりましたが、買い一巡後は少しもみ合いに。関税が少し緩和されたこいとが好感されましたが、売りポジションの一斉巻き戻しもあって今日はぶち上げました。
SOX半導体も反発したことで半導体関連を中心に買われて、今日は東京エレクトロンやレーザーテックなど主力企業が大きく反発。アドバンテストも一時18%上昇しました。他にも電気機器、銀行、輸送用機器などのセクターが特に買われました。
昨日の米国株も反発。S&P500+9.52%、ナスダック+12.16%。
相互関税の一部を90日間停止にしたことでマーケットは好感、しかし中国に対しては125%関税です。
相場は終盤にかけ上げ幅を拡大。売られていたハイテク中心に買い戻しとなり、AMD23%上昇、テスラ22%上昇、エヌビディア18%上昇、アップル15%上昇など、大きく買われました。コモディティ、仮想通貨も大幅上昇しました。
債券市場:リスクオンでも「米債離れ」は止まらず
米国10年債は4.3%まで上昇しました。日本10年債利回りも1.3%台をキープ。
ドイツ・フランス・オーストラリアなど、主要国金利も軒並み上昇しています。
関税問題も大事ですが、“財政の持続性”にも警戒感が高まり、米国債はもう安全資産ではないという空気もあることから日米欧の金利が“同時に上昇している”のです。
これは利上げ観測ではなく、「国債への信頼低下」があり、世界の債券市場では不安が高まっています。
「関税は止まっても、世界の分断は止まらない」「米国の財政赤字や国債発行リスクはむしろこれから」
そんな声もあるのです。トランプや財務長官のベッセント氏は後者のリスクを回避するべく、一度株をクラッシュさせ、金利をさげる環境を整えようとしています。なので、この下落はウェルカムであり、トランプチームのシナリオ通りに動いていると以前からお伝えしています。
為替市場:ドル円は一時148円台、円安戻しも不安定
ドル円は148円台まで円安が進行しました。朝方からやや円高に振れましたが、表面的には、「関税延期→リスクオン→円売り」というわかりやすい構図に見えます。
しかし、実際には米金利上昇が先行して、ドル買いで円が引きずられている状態とも言えます。
関税が落ち着くまでは「日銀が動けない」でしょうし、「利上げ観測の後退」となるのも仕方なし。むしろ今この流れで利上げするなんて愚策中の愚策です。
今夜は米国の消費者物価指数が出てきますが、市場の関心はあまり高くなさそう。それくらい米国のインフレ問題はほぼ解消していると思っていいでしょう。
むしろこれから米国経済がさらに強くなることで、再度インフレが懸念されだすと、マーケットにはより警戒感が高まるはずです。そのときは要注意ですね。
トランプ関税、友好国には「90日間の一時停止」処置
トランプ関税も振り返っておきます。
今回の90日間関税停止は、あくまでも日本、韓国、EUなどの友好国に対する「交渉のための猶予措置」です。
つまり、“同盟国”に対する上乗せ関税を90日間停止しただけで、中国に対しては最大125%へ関税引き上げを発表。
関税の本質は中国包囲網で、米中のデカップリング(二ヶ国間で結びつきや連動性が薄れること)です。
米中対立の構図は強まる一方で、また中国もメンツ社会ですから、米国がそう言ってくるならこっちもやってやるぜマインドで、トランプvs習近平のバチバチのバトルが続いています。
「敵味方をはっきり分けた上で交渉の場に持ち込む」という、ストロングスタイルの米国流ディールを貫くトランプ。次は習近平のターンですが、続報を待ちましょう。
日本経済への影響:「GDP成長率半減の可能性」も
また、UBS証券は今回の関税ショックによって、日本の2025年のGDP成長率が当初見通しの1.2%から0.6%に半減する可能性を指摘しています。
特に自動車産業やハイテク企業など、輸出関連企業への影響が長期的に残ることを懸念しており、GDPが半減するということは、日本がリセッション入り(ほとんどしているのですが)するリスクがさらに強まるかもしれません。
単なる輸出減少ではなく、企業収益悪化 → 設備投資・賃金抑制 → 内需縮小という負のスパイラルも考えられ、なのでこのタイミングで日銀の利上げなんてあってはいけないと思っていますが、この懸念はまだまだ残ります。
向川の視点:「味方と敵を選別する外交」
ここ数年、世界はより一層グローバル化しましたが、トランプ大統領になってから揺れ戻しが起こっています。
「世界秩序の再構築」と言ってもいいほどの急激な再編。米国は「味方と敵を選別する外交」を明らかに仕掛けていますし、その視線は当然、日本にも向いています。
日本は中国との貿易もたくさんありますし、中国を経由して米国に輸出している企業も多いです。消費税も米国から見たら関税で、あらためて日本と米国との関係性を再構築しようとしています。
関税による分断経済の先には、あらゆるモノやサービスを自前で作れる国が強くなるはず。その中で日本は「円安・利上げ・輸出不安」という三重苦。
目先の期待としては、決算です。今日はファストリが営業利益予想を5450億円に上方修正するなど好決算が出ましたが、自社株買いと好決算で指数を押し上げる流れに期待したいところ。海外投資家は2週間ぶりに買い越しで、需給面はやや変化の兆しも。
今夜は消費者物価指数、引き続きトランプ発言に警戒。明日もいい波乗っていきましょう!