From:編集部 黒木
2024年9月にアメリカの司法省はエヌビディアに対して反トラスト法に違反しているとの嫌疑を持ち、調査を本格化したとの報道が流れました。
反トラスト法とは、日本における独占禁止法のようなもので事業者による不当な取引制限や価格協定、市場独占を禁止する3つの法律「シャーマン法」「クレイトン法」「連邦取引委員会法」の総称です。
エヌビディアが8月末に発表した決算内容が良かったにもかかわらず、市場の期待を超えられなかったとして株価が下落している状況などは皆さんご存知でしょう。
今回の反トラスト法違反調査の本格化がどのような影響を与えるかについて考察をしたので参考にしてください。
今回の騒動について
米国司法省は、以前にもエヌビディアに対して質問状を送っていましたが、今回は法的拘束力のある要請を行いました。
内容はエヌビディアが他のサプライヤーへの切り替えを難しくし、生成AI半導体の調達先をエヌビディアだけにしない企業に対して不当な取り扱いを行っているとのものです。
結果的にエヌビディアの株価は1日で9.5%下落し大きな影響を与えています。
今後どのような展開になるのか予測してみました。
エヌビディアの作っている半導体の技術力は高い!
過去にも飯トラスト法違反として、GoogleやMicrosoftがこのような事態になりました。
一時的に株価は下がりましたが、現在は世界経済を引っ張っているのは皆さんご存知のところでしょう。
エヌビディアに関しても、一時的には株価は乱高下する可能性がありますが、そもそもエヌビディアの作っている半導体の技術力が非常に高いため、長期的に見れば株価は上昇すると思われます。
例えばエヌビディアのGPUは、現在のAI開発において不可欠です。
GPUは、コンピューターの中で主に画像処理を担当する特殊な部品です。
もともとはビデオゲームの3Dグラフィックスを高速に処理するために開発されましたが、近年は人工知能(AI)の分野で重要な役割を果たすようになりました。
AIの学習処理は膨大な計算を必要としますが、GPUの並列処理能力がこれを効率的に行えるのです。そのため、AIの急速な発展とともに、GPU市場も急成長しています。
さらに、エヌビディアは単なるハードウェア企業を超えて、AIソフトウェアプラットフォームの開発にも注力しています。
また、データセンター向け製品の需要増加も、エヌビディアの成長を後押しする要因となるでしょう。
クラウドコンピューティングやエッジコンピューティングの普及に伴い、高性能GPUの需要は今後も拡大が見込まれます。
財務面でも、高い利益率と堅調なキャッシュフローを維持しており、今後の成長投資や株主還元の余力も十分にあるといえるでしょう。
また、エヌビディアは革新的な開発ができる環境も整えています。
エヌビディアは定期的に社内ハッカソンを開催し、従業員に革新的なアイデアを自由に追求する機会を与えています。
ちなみにハッカソンとは、アプリやシステムの開発を担当するエンジニア、デザイナー、プログラマーなどが集まり、集中的に開発を行うイベントのことです。
これらのハッカソンから生まれたアイデアの中には、実際の製品開発につながったものもあります。
また、社長であるジェンスン・ファンは、若手従業員から最新のテクノロジートレンドを学ぶ「リバースメンタリング」を実践しています。
これにより、常に最新の技術動向に触れ、会社の方向性を決定する際の参考にしているといわれています。
このように、革新的なアイディアが生まれやすい環境を作っているのも、エヌビディアの大きな強みであるといえるでしょう。
また、今回の反トラストの問題だけではなく、そもそもが現在のエヌビディアの株価はバブルではないかといった意見もあります。
しかし、当時のテックバブルと現在の状況を比較すると全く異なるので、バブルと見るのは早計でしょう。
現在の状況がバブルではないと考えるための材料として、過去のテックバブルの状況について簡単に説明をします。
「テックバブル(1995-2000年)と生成AIブームの類似点と相違点」
1995年から2000年にかけてIT関連企業の株価が、実際の企業価値や収益性を大きく上回って急激に膨らむドットコムバブル現象が起こりました。
主に以下の事象からこのバブルが発生したといわれています。
- 新技術への過度の期待
- 投機的な投資の増加
- 非現実的な成長予測
- 企業の実績よりも将来性に基づく評価
テックバブルは通常、急激な株価上昇の後に崩壊し、多くの投資家に損失をもたらしました。
代表的な例として、1995年に起こったドットコムバブルがあります。
過去のブーム「テックバブル」とは
テックバブルの代表格であるドットコムバブルは1995年ごろから2000年頃までアメリカで起きた大幅な株高のことをいいます。
ハイテク株の多いナスダックでは1995年の1,000ポイント台から2000年には5,000ポイント台まで約5倍株価が上がりました。
インターネット関連の株価が大幅に上昇した原因はインターネットが今までのビジネスのあり方を大きく変える可能性があると期待されていたためです。
インターネット関連の仕事をしているというだけで多くの会社の株価は上昇しました。
しかし実態が伴っていない株価上昇であったため2001年にはドットコムバブルは崩壊しました。
ドットコムバブルが起きた理由
ドットコムバブルが起きた理由は主に2つです。
- インターネットビジネスへの期待が高くなったこと
- 根拠なき期待
それぞれの理由について説明していきます。
インターネットビジネスへの期待が高くなったこと
マイクロソフトが発売したウィンドウズ95の成功で多くの人がインターネットの可能性に注目していました。
インターネットビジネスは既存のビジネスモデルを大きく変える可能性に溢れていたのです。
当時ITについては若者が強いというイメージがあったので大学を卒業したばかりの若者への需要が高まりました。
銀行はインターネットという単語のあるプレゼンテーションを内容は内容の善し悪しにかかわらず採用し、お金を貸している状態でした。
内容が稚拙なものでもインターネット関連のビジネスであれば大きなお金を調達することができたのです。
根拠なき期待
ドットコムバブルの時のアメリカはインターネットを扱っている企業というだけで株価は大きく上昇していました。
インターネットを扱っているということだけで事業の中身をよく確認せずに投資されている状況で明らかに過剰な状況でした。
このように、過去のテックバブルは明らかに異常でした。現在から見ると信じられないような状況です。
現在のAIブームは決してこのような過剰な期待からできているわけではないので、エヌビディアの株価についても長期的に見れば安定するのではないでしょうか?
まとめ
今回はエヌビディアの反トラスト法関連の解説をしました。
反トラスト法の影響で株価は急激に下落をしていますが、長期的に見ればそんなに心配はないはずです。
過去にもMicrosoftやGoogleが反トラスト法の嫌疑をかけられました。しかし、現在の状況は皆さんご存知の通りです。ぜひ短期の値動きに惑わされることなく、長期目線で投資を行っていただければ幸いです。