為替ヘッジについて徹底解説!

コラム

From:編集部 黒木

為替変動リスクを抑える代表的な方法は為替ヘッジの利用です。

今回は為替ヘッジについて詳しく説明します。わかりやすく説明しますのでぜひ参考にしてください。

そもそも為替変動リスクとは?

為替変動リスクとは、円と外国為替相場の変動により、外貨建て資産の価値が変動する可能性のこと。

基本的には為替も株式と同様に需要(買いたい人)と供給(売りたい人)のバランスで価格が変動します。

米ドルと円で説明すると、円よりも米ドルの人気が高まり、米ドルが買われると円安になり

ますし、逆に円がドルよりも人気が出て円が買われると円高になります。

為替変動によって損失を負ってしまう可能性がありますが、逆に利益を得られる可能性も

あります。

為替変動を利用した代表的な投資商品は外貨預金やFXです。外貨預金は基本的に為替が円安方向に動くと利益になります。

一方、FXの場合は「売り」から入ることもできるので、為替が円高に動いても利益を狙える金融商品です。

為替変動はリスクであると同時に利益を狙えるものなのですが、投資家の中には、「為替を予想するのは難しいし急激に大きく動くこともよくあって怖い。為替リスクを回避して運用したい」と考えている人もたくさんいます。

特に、日本はほとんどの通貨に関して長期円高傾向にありますので、為替リスクを排除して

運用をしたいと考える人が多くいても全く不思議ではありません。

もちろん、FXは円高局面になっても利益を出せる投資商品ですが、外貨預金をはじめほとんどの金融商品は円安にならないと利益が出ないので、為替リスクを排除したいと思うのは当然といえるのです。

為替ヘッジとは 

為替ヘッジとは、為替変動の影響を抑える仕組みのこと。外貨の先物取引やオブション取引を利用して、為替変動リスクを回避します。

為替ヘッジのイメージを図にしてみました。

出典:伊予銀行

海外資産に投資する場合、外貨建てでは、運用収益が得られたとしても、為替変動により円換算すると資産価値が下がる可能性があり、為替ヘッジを行うことで、こうした損失を抑制するできます。

通常、為替ヘッジは、円高による為替差損を回避する目的で行われることが多く、外貨建て資産に投資をすると同時に外貨売り円買いの先物予約をして将来の為替変動に備えます。

その際、為替相場の円安局面で得られる為替差益は犠牲になり為替へッジする際には2か国間の短期金利差相当のヘッジコストがかかります。

海外の株式や債券に投資する投資信託を購入する場合、商品によっては為替ヘッジなし·ありを選べます。

為替ヘッジなしの投資商品の場合、為替変動リスクを受けることになるので一般的には為替が円高になった場合はマイナスになり、為替が円安に進めばプラスになります。

為替が円安方向に進んでいれば大きな利益になりますが、為替は一般的に円高のスピードのほうが早いです。

例えばリーマンショックやコロナショックなどを思い浮かべていただくとわかりやすいでしょう。

このような局面が訪れてしまうと為替ヘッジなしの投資商品は大きなマイナスになってしまうのです。

一方、為替ヘッジありの商品の場合、為替変動リスクのすべてを抑えることはできませんが、為替リスクの大半を抑えることができます。

もちろん為替が円安になった時の為替差益を得ることはできませんが、為替が円高に進んだときのマイナスを防ぐことができるのは大きなメリットといえるでしょう。

為替ヘッジのメリットは2つ!

為替ヘッジを利用するメリットはたくさんありますが、主なメリットは2つに集約されます。

それぞれのメリットについてわかりやすく説明しますので是非参考にしてください。

為替変動による損失を抑えられる

為替ヘッジを利用する最大のメリットは、為替の変動リスクを抑えられることです。

先ほども説明しましたが、米国株などの海外資産に投資をする場合、海外資産自体では収益を得られたとしても為替変動により円換算すると資産価値が下がる可能性があり、為替ヘッジを行うことで、 こうした損失を抑制できます。

通常、為替ヘッジは円高による為替差損を回避する目的で行われることが多く、外貨建て資産に投資をすると同時に外貨売り円買いの先物予約をして将来の為替変動に備えることが可能です。

「為替ヘッジなし」は、為替の変動リスクをとるので、為替が円高方向に向かうと大きなマイナスになってしまいます。

しかし、「為替ヘッジあり」を選べば、完全に為替変動リスクを減らすことはできませんが、為替変動リスクの大半を抑えられますので、円高局面には大きな力を発揮するのです。

コロナショック以降、為替の動きは安定していますが、コロナショックやリーマンショック

のような大きな経済危機が起こると為替変動リスクは非常に高くなるので為替ヘッジを使う意味は非常に大きいといえるでしょう。

安定的な運用が期待できる

為替ヘッジをかけることによって、海外株式や海外債券などの海外資産にリスクを減らしての運用ができます。

海外資産に円から投資する場合、どうしてもドルやユーロなどの為替変動リスクが付きまとってきますが、為替ヘッジを利用すれば、 完全ではないにしても為替リスクを排除しての運用ができるのです。

近年、米株を中心に海外資産への投資に注目が集まっていますが、米ドルの動きは決して良

いものではありません。

また、為替リスクを極力、排除して純粋に海外資産に投資したい方にとって為替ヘッジの利用は非常に大きなメリットになります。

為替ヘッジのデメリットは2つ!

為替ヘッジには様々なメリットがありますが、デメリットもあります。

為替ヘッジの主なデメリットは2つありますので是非参考にしてください。

ヘッジコストがかかる

為替ヘッジは手数料なしで行えるものではありません。 ヘッジコストというコストがかか

ります。

ヘッジコストは、理論的には「外貨の短期金利と日本円の短期金利の差」となりますが、各通貨の見通しや需給などの状況によっては、外貨の調達に対する上乗せ金利が発生し、為替ヘッジコストは短期金利の差とかい離します。

ヘッジコストの主な上昇要因は以下の通りです·

・金利要因

海外…海外の中央銀行の利上げ・金融引き締め観測

国内…日本銀行の利下げ・金融緩和観測

・需給要因

海外・国内ともに米ドルやユーロなどの海外通貨に対する決済資金需要・金融規制などによる外貨の供給減・国内銀行などの外貨建て資産への投資需要

ヘッジコストの変動要因について詳しく説明します

・金利要因

日本銀行の政策金利と海外の中央銀行の政策金利の差がヘッジコストに影響します。

各国中央銀行の金融政策に対する市場の思惑により、市場が織り込む将来の金利差に変化が見られた場合は、ヘッジコストの変動につながりやすくなるので注意が必要です。

・需給要因

企業の決済資金として外貨の需要が高まる場合があります。特に基軸通貨である米ドルや、ユーロなどのメジャー通貨は、代金決済のため、需要が高まり、上乗せ金利の上昇を通じて、一時的にヘッジコストが上昇する傾向があります。

また、市場のリスクが高まるとリスクからの逃避需要が増加しヘッジコストが上がりやすいです。先行きへの不透明感が高まると、リスク回避の動きから基軸通貨である米ドルの需要が高まります。リーマンショックやコロナショックなど、 金融市場が不安定になると米ドルの需要が高まり、ヘッジコストが上昇する場合があるので注意が必要です。

また、基軸通貨である米ドルの供給面もヘッジコストに大きな影響を与える傾向があります。

米ドルの供給面では、リーマンショック後に各国で導入・強化されたレバレッジ規制や、ボルカールールなどの金融規制が米ドルの供給量を減少させる遠因となっています。

米ドルの供給量が少なくなるとヘッジコストは高くりますので注意してください。

現在の米ドル円の為替ヘッジコストは0.5%を切る非常に低い水準です。アメリカは2023年までにテーパリングの可能性がありますが、当面は低い為替ヘッジコストが維持される見込みです。

しかし、現在はコストは低いですが、過去には3%を超える高いヘッジコストがかかってたたこともあります。

ヘッジコストがかかることは為替ヘッジの大きなデメリットといえるでしょう。

完全に為替リスクを排除できるわけではない

為替ヘッジをかけたからといって完全に為替リスクを排除できるわけではありません。

為替ヘッジをかけることによって大部分の為替リスクを抑えられますが、相場動向などによって為替変動リスクを受けることもあります。

100%為替変動リスクを抑えられないのは為替ヘッジの大きなデメリットでしょう。

まとめ

今回は為替へッジについて説明しました。為替ヘッジとは要は為替変動リスクを抑えられる仕組みです。

コロナショック以降のマーケットは基本的に上昇傾向にあるので、為替ヘッジの必要性は少ないと思われている方が多いかもしれません。

しかし、過去のマーケットを振り返っていただくと急速に円高になったことは何度もありま

す。

そのような局面の時に為替へッジをつけておくメリットは非常に大きいです。

為替の動きは投資のプロであるファンドマネージャーでも読みづらいといわれており、個人投資家が正確に為替の動きを予想するのは至難の業といわざるを得ません。

マーケットが常に変動をするものです。一本調子で長期間上昇することはあり得ません。

為替ヘッジの必要性は今は薄いかもしれませんが、今後必要性が高まる局面が来るかもしれません。

ぜひ今回の記事を参考に為替ヘッジの理解を深めていただければ幸いです。