
テクニカルアナリストの向川a.k.aチャートの向こう側です。
今月は日本株も米国株もいい流れになりましたが、5月相場のフィナーレを飾るのがエヌビディアの決算です。
エヌビディアのような主力ハイテク株は、もちろんナスダックに影響を与えますが、ダウにも採用されているため、もはや米国3指数すべてに良くも悪くも影響を与えます。
ここ最近のマーケットのトレンドはAIや半導体で、その先頭を走っているのがエヌビディアです。つまり、、エヌビディアがコケる→AIブームにブレーキとも考えられるのです。
まず今日は、そんなエヌビディアをザクっと振り返りましょう。
こちらは直近1年のエヌビディアのチャート。

エヌビディアの沿革
エヌビディアは、1993年にジェンセン・ファン氏らによって設立されたGPU(画像処理半導体)を中心としたテクノロジー企業です。
主にゲーム、データセンター、AI、自動運転などの分野で事業を展開し、近年はAIブームにより急成長しています
1993年:カリフォルニア州サンタクララで設立。GPU開発に注力。
1995年:初の製品「NV1」を発売。
1999年:ナスダック上場。GPU市場での地位を確立。
2000年代:ゲーム向け「GeForce」シリーズで成長。グラフィックス分野のリーダーとなる。
2010年代:AIとデータセンター向けGPU需要が増加。「CUDA」プラットフォームでAI開発を加速。
2020年代:生成AIの急成長に伴い、データセンター部門が主力に。中国向け輸出規制や半導体不足が課題となる一方、H100やBlackwellアーキテクチャで市場をリード。
直近3年の決算データ
では、次にエヌビディアの決算を振り返ります。(単位:百万米ドル、EPSは米ドル)
2022会計年度(2021年2月~2022年1月)
- 売上高:26,914
- 純利益:9,752
- EPS(調整後):4.44
- 特徴:ゲーム部門が主力だったが、データセンター部門が急成長。AI需要の高まりが業績を牽引。
2023会計年度(2022年2月~2023年1月)
- 売上高:26,974
- 純利益:4,368
- EPS(調整後):3.34
- 特徴:ゲーム部門の売上が半減(約50%減)するも、データセンター部門が堅調。中国向け輸出規制の影響で利益が減少。
2024会計年度(2023年2月~2024年1月)
- 売上高:60,922
- 純利益:29,760
- EPS(調整後):12.96
- 特徴:データセンター売上が急増(前年比217%増の47,500)。生成AI需要が爆発的に拡大し、営業利益率が64.9%に達する。ゲーム部門も回復(56%増の2,865)。
2025会計年度(直近四半期データ:2024年2月~2025年1月)
- 2025年Q1(2024年2月~4月):
- 売上高:26,044
- 純利益:14,881
- EPS(調整後):0.89(予想0.85を上回る)
- 2025年Q2(2024年5月~7月):
- 売上高:30,000
- 純利益:16,599
- EPS(調整後):0.68
- 2025年Q3(2024年8月~10月):
- 売上高:35,000
- 純利益:19,300
- EPS(調整後):0.78
- 2025年Q4(2024年11月~2025年1月):
- 売上高:39,331
- 純利益:22,091
- EPS(調整後):0.89
直近のエヌビディアの状況
エヌビディアがここまで話題になったのは、直近の2ー3年くらいです。
この間、2022年から2024年にかけて売上高は約2.3倍になり、特に2024年はデータセンター部門が好調で、全売り上げの86%ほどになります。2025年Q4では39,331とさらに加速。
これはエヌビディアが作る生成AI向けGPUの需要が伸びており、データセンター売上は2025年Q1で35,600(前年比93%増)となりました。
純利益は2023年に低迷したものの、2024年に6.8倍に増加。2025年Q4では22,091と過去最高を更新しました。
EPSも2024年の12.96から2025年Q4の0.89と堅調なものの、成長率はやや鈍化傾向です。今回の決算はちょっと弱気ムードもあって、見通しがそんなに良くないんじゃないか?という声もあります。
これには米中のバチバチも影響していて、米政府の輸出規制によってデータセンター売上に占める中国の割合が減少しています。(20%超から一桁台へ)
シンガポールを経由して中国に売ってるのでは?という疑惑もあり、中国の景気鈍化あって不安視されています。
さらに利益率の低下も指摘されており、実際、2025年Q2で利益率が3.3%低下しました。新チップ(Blackwell)の量産遅れや、AIブームによる競争激化が背景にあります。
また、GPU需要が供給を上回っており、品薄状態が継続していることもあります。それほどまでに世界中の企業がエヌビディアの高性能で高価格のGPUを求めて列をなしているのです。
今回の決算の見どころ
今回発表される2025年度Q4決算では、以下の点に注目します。
1つ目はデータセンター部門の成長継続について。Q3では前年比1.9倍だった売上が、今回のQ4ではどうなるか。つまりAI需要がどこまで伸びているか、とも言えますが、Blackwellがどこまで売上につながっているかなど、まず見ておきたいところ。
2つ目は利益率について。2024年の営業利益率64.9%はちょっと異次元すぎます。しかしQ2で3.3%低下しており、今回のQ4で利益率が回復するかどうか。新チップ開発や生産投資のコストが利益をどれだけ圧迫しているかは見ておきたいですね。
3つ目はEPSと市場予想について。Q4のEPSは0.89で、市場予想をやや上回りました。しかし、市場の関心は次期ガイダンスで、強気の見通しが出るか注目です。26年Q1の予想は売上43,350、EPS0.73。
4つ目は中国市場と規制について。中国向け売上が低迷しており、規制の影響がどの程度あったのか。中国と米国はバチバチで、さすがにこの流れからより中国に寄っていくのはトランプがブチギレると思うので、もしかしたら欧州や日本などにポジティブな材料が出るかもな、なんて淡い期待もしています。
5つ目は次世代製品について。Blackwellや新しいメモリ搭載チップの状況も出てくるはず。新製品の量産スケジュール遅延もあったので、これについても見ておきたい。
最後6つ目が株主還元について。つまり自社株買いですが、数兆円規模の自社株買いを過去にも発表しており、今回も何かしらのアナウンスに期待したいですね。
決算を楽しむために
もはやエヌビディアはIバブルの象徴とも言えますが、成長率鈍化や規制リスクがあるのも事実。すでにピークは過ぎ去ったと思っています。中国のDeepSeekなど、他社の台頭もありますしね。
特に今回はガイダンスが弱そうな雰囲気もあって、革ジャンCEOの生成AIの将来や競合についての発言はマーケットに影響を与えるはずです。
米国も日本も、ここまで半導体がかなり売れているので、ここで好決算、次回ガイダンスもポジティブな内容で来てくれたら、流れも変わるかもなんですけどね。
決算は明日の朝方、日本マーケットのオープン前に出ます。では、明日もいい波乗っていきましょう!