プロも実践!PERとPBRの正しい使い方

コラム

From:編集部 黒木

PERとPBRを正しく使えていますか?

この2つは株価の水準を判断するのに欠かせない指標です。あまりにも当たり前に使われているので、意外とその計算方法や使い方をきちんと調べたことがない人も多いのではないでしょうか。

PERとPBRは株式投資の基本でありながら、プロの投資家も常に使用する指標です。正しい意味と活用法を知って、株式投資にしっかりと役立てましょう。

1.PERとPBRの基本的解説

まずは2つの指標の基本的な意味を確認しましょう。

1-1 PERとは

PERは「株価収益率」と訳され、以下のように計算されます。

1株当たり利益は、企業の利益を1株当たりに換算するといくらになるかを計算した指標です。

例えば、A社の今年度利益が100万円とします。A社が株式を全部で1万株発行している場合、1株当たり利益は「100万円÷1万株」で100円です。

A社の株価が1,000円だとすると、PERは「1,000円÷100円」で10倍となります。

PERは、その株をどれだけ保有したら投資額を回収できるかを意味します。仮にA社が同じペースで毎年100万円の利益を生み出し続けると、10年後に累積の1株当たり利益は1,000円になります。株価1,000円であるA社への投資は、理論上10年で回収できると考えられます。

1-2 PBRとは

PBRは「株価純資産倍率」といい、以下のように計算します。

1株当たり純資産は、企業の保有する全資産(純資産)を1株あたりに換算するといくらになるかを表します。

先ほどのA社の純資産が1,500万円だとすると、発行株式は1万株でしたので1株当たり純資産は「1,500万円÷1万株」で1,500円です。

PBRは「1,000÷1,500」で0.67倍となります。

PBRは、企業が解散してすべての財産を精算した価値に対する、現在の株価の割合を表しています。A社の場合、純資産が1,500万円ありますので、解散すると1,000円の株価に対して1,500円戻ってくると考えられます。

PBRが1より小さい場合、株価はその企業が解散した時に返却される資産価値よりも低く評価されています。1より大きい場合は高く評価されています。

2.PERとPBRの活用法

PERとPBRは、他のPERやPBRと比較して活用します。ではどのような比較をするとよいのか見てみましょう。

2-1 過去と比較する

2つの指標の活用方法として、過去との比較が挙げられます。同じ企業における現在と過去の数値を比較して、株価水準を判断する材料とします。

例えば、株式相場全体が軟調なときには、個別企業の業績が順調でも株価が下落することがあります。この時、過去と比較すると現在の指標は割安になっているでしょう。これを相場の好機ととらえて買付を検討するのです。

2-2 同じ業種内で比較する

PERとPBRの活用方法として、同じ業種内での株価比較があります。この2つの指標は、同じ業種内であれば、比較することでとても有効な指標となります。

同じ業種内でこの指標の数値が突出して高い企業は、株価が割高な水準にまで買われている可能性があると考えられます。

2-3 インデックスと比較する

PERやPBRは、成長企業では高く成熟企業では低くなる傾向があります。この指標をインデックスと比較することで、市場がその企業・業種を成長段階と見ているのか、成熟段階とみているのか、その企業の位置づけが判断できます。

また、インデックス自体のPERやPBRが高いときには、市場は強気に傾いている。低いときには、弱気に傾いているという判断材料にもなります。

3.業種別PERとPBRの傾向

それでは例として2つの業界を見てみましょう。

3-1 自動車業界

トヨタ自動車(7203)ホンダ(7267)スバル(7270)
PER9.68倍10.17倍6.52倍
PBR1.20倍0.67倍0.90倍
時価総額46.1兆円8.9兆円2.1兆円

まず自動車業界です。自動車業界のPERは平均的に5~10倍程度で推移しています。一方、PBRは1倍を割れる水準の企業が多いです。上記3社の指標をみると、PERではスバルが割安です。一方で、PBRを見てみるとホンダのほうが割安です。

3社のなかで、トヨタ自動車はPBRが1.20倍と他を大きく上回っています。これはトヨタ自動車株の人気が他の銘柄よりも高く、相対的に株が買われていることを示しています。

3-2 銀行業界

三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)三井住友フィナンシャルグループ(8316)みずほフィナンシャルグループ(8411)
PER11.7倍11.64倍10.28倍
PBR0.83倍0.72倍0.66倍
時価総額15.8兆円9.6兆円6.3兆円
※2023年11月7日現在 参考:ヤフーファイナンス

続いてメガバンク3社の比較を見てみましょう。両指標ともかなり近い水準になっていますが、みずほフィナンシャルグループが割安で、三菱UFJフィナンシャルグループがやや買われていることがわかります。

4.PERとPBRを使用する時の注意点

4-1.割安と人気

割高な銘柄は人気があるから、株が買われて割高になっているという側面があります。割安な銘柄は人気がないので、誰も株を買わず割安となっています。

ただ割安であれば良いということではありません。倒産が予想される企業の株は、買う人が少ないので割安に放置されます。

PERやPBRを見るときには、この観点があることをよく認識しましょう。割安銘柄への投資は、市場が適正な評価をすれば株価が上昇する銘柄に投資をしなくてはいけません。

4-2.業種や市場環境の違い

PERとPBRは、その企業が属する業種によって適正な水準が変化します。全く異なる業種の企業と比較しても意味がありません。

また、市場環境によっても適切な水準が異なります。株式市場全体が強気な時には高い数値、弱気な時には低い数値となる傾向があります。

4-3.利益予想の注意

PERの計算には企業の利益を使用します。ここで使う利益は過去のものよりも将来の利益予想のほうが、株価の予測効果が高いと考えられます。利益の予想は決算のときに企業がおこなったり、アナリストのような専門家がおこないます。しかし、これらの予想は修正されることもしばしばありますので注意が必要です。

4-4.PER計算上の注意

PBRの見方にも注意点があります。株価が一定で変わらず企業の純資産が減少すると、PBRは上昇します。

企業の業績悪化時にも純資産が減少する場合があり、このときPBRは上昇します。しかしこのような上昇は、業績がよいときの上昇とは意味が異なることに注意が必要です。上昇要因がどこにあるのか把握しながら数値を評価することが重要です。

5.まとめ

PERとPBRの意味と活用方法を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

さまざまな株式情報サイトやアナリストレポートを見ても、この2つの指標は常に記載されています。それだけ重要な指標ですから、何となく見ているだけでは大変もったいないですね。

PERとPBRの意味と使い方をしっかりマスターし、株式投資の有効なツールとして使いこなしましょう。