第三弾:円安悲観の人へ。円高になると株価下がって業績ダウン企業が続出する理由。

テクニカルアナリストの向川a.k.aチャートの向こう側です。

前々回、前回と円安についてのコラムを書いてきました。今日はそのシリーズ3弾です。

もしまだ見てなければ、こちらから見ておいてください。

第一弾:ドル円158円!円安でピンチ?円高の方がいい?悲観的な経済オンチさんへ。

第二弾:続・円安に悲観的な人へ。収入増やして経済的に豊かになるには円安を進めた方がいい理由。

特に一昨日、2回目の為替介入があって、おそらくトータル10兆円ほどの円買いがあったはず。これで円高にふれてますが、株価は下がっています。

こちらは直近5日間の日経平均。

こちらは直近5日間のドル円。

昨日は雇用統計があり、急激にドル安・円高にふれました。一時は152円を割れるまで円高になりましたが、現在は再度153円まで戻っていますね。

日経平均とドル円が相関する理由

もちろん必ずではないですが、基本的にドル円が円安に進むと日経平均は上がりやすいです。

なぜなら、日経平均は225社の塊で、この中にはトヨタなど誰もが知る大企業が並びます。このような会社は国内だけでなく海外に売ってますから、円安になって海外の人がコスパよく買いやすくなるなると業績が伸びます。

これは昨年の日経新聞の記事ですが、円安によって業績が伸びて儲かりまくりです。

そもそも日本経済を引っ張ってるのは大企業です。そして大企業は海外に売ってる。だから円安の方が日本経済全体を見た時にメリットが大きいわけですね。

一方で、中小企業は国内向けのビジネスをしてるところが多い。よって、「大企業だけ優遇」みたいな論調もあるのですが、それは仕方ないです。よーいどんで同時にみんな豊かになることはできません。

物事には優先順位があるので、まず大企業からで、そこから中小企業にいい流れが波及していくわけですね。

円安で国力低下は間違い。

最近の円安悲観を見ていると、「円安で国力低下」という勘違いが多いですね。でもそれは間違いです。

そもそも、自国の通貨を高くしたいと思ってる国なんてほとんどありません。なんでそんなことするんですか?笑

なんでわざわざコスパ悪くするのか、さっぱり意味がわからないのですが、基本的に自国の通貨は安い方がいいんですよ。その方が日本に住んでいる私たちはメリットが大きいです。

むしろ、海外の人がコスパよく買えるなら、その分だけ大きく値上げすればいいんですよ。ドル円100円から150円になったら、単純にこれまでより1.5倍コスパよく買えるわけです。

であれば、これまで1万円で売ってたものを15,000円で売っても体感は一緒です。でも売ってる私たち日本企業は儲かるじゃないですか。同じことやっててただ値上げするだけで、儲けは1.5倍ですよ。

繰り返しますが、このような経済政策や金融政策はゼロor100ではありません。どちらもメリット・デメリットがあって、メリットが大きい方をやるのが正解です。

円安で株価は絶好調、税収も過去最高、正社員も非正規も賃上げに成功、失業率も歴史的な低さというメリットと、微々たるインフレで、以前までのデフレから考えると多少の値上げはあるけれど、やっと世界標準の2%のインフレ率になったこと、それぞれメリット・デメリットをちゃんと考えましょうということですね。

そもそも円安円高は為替ですから、1ドルいくらと単位が明確です。でも国力って?GDPのことですか?それとも失業率のこと?まずこの定義が曖昧なので、円安で国力低下はそもそも論理破綻してます。

また、もし仮に国力がGDPのことを言っているなら、円安の方がGDP伸びて経済成長しているので、やっぱり論理破綻してます。

で、おそらくですが、円安悲観してる人は文字に引っ張られてると思うんですね。「円安」とか「貿易赤字」とかです。どちらもネガティブなイメージがありませんか?

文字に引っ張られてない?

円安=円が安い。だから日本が貧しい。東南アジアの人からも安い、貧困と思われてるみたいな間違った刷り込みです。

円が安いのは私たちからしたら大きなメリット。それは上に書いた通りですが、他にも貿易赤字もそうですね。これも「赤字」という言葉に引っ張られてると思いますが、そもそも貿易赤字とは、輸出よりも輸入の方が多いことです。

一方で、輸入よりも輸出が多ければ、貿易黒字ですが、逆に貿易黒字が増えるとどうなるか?

その分、相手の国から受け取る外貨が増えるので、それを日本円に交換するため、外貨を売って円を買うことになります。よって、円高圧力が高まります。

円高になるとどうなるか?円が高くなるので、海外の人から見たらコスパ悪いな、ですよ。つまり大企業の業績はダウンすることが考えられます。当然、日経平均も下がるし、市場の雰囲気は悪くなります。

ちなみに、2023年度は5兆8919億円の赤字で、3年連続。前年度は過去最高で22兆円の貿易赤字です。

出典:日経新聞

これも”赤字”だから悪いというわけではなく、メリットデメリットを考えた時に私たちはメリットが大きいはずです。

ドル円に相場はどのように動くか?

最後にドル円の動きの考え方を解説します。

金融相場を分解すると「金利」「為替」「株」とあります。私たちは株のトレーダーなので、最も株の動きに注目してると思われがちですが、ちょっと違います。まず何を見ているかというと、金利です。

金利は「炭鉱のカナリア」とも言われます。炭鉱でカナリアが鳴いたら何か起こる、つまり”不穏なことの前触れ”みたいな意味で使われるのですが、金融マーケットにおけるカナリアは金利なのです。

まず金利が動く。金利が動くから為替が動く。為替が動いて株が動く。この「金利→為替→株」の流れは暗記レベルで覚えておきましょう。

それを前提に、ドル円はどのように動くか?それは米国の日本の金利を見るとわかります。

が、その前にもう1つ前提として、「なぜ金利が動くのか?」を深掘りましょう。そもそも金利の行く末を決めているのは誰か?それが中央銀行なのですが、日本だと日本銀行ですね。(以下、日銀)米国の中央銀行はFRBです。

それぞれ日銀は植田さん。

出典:ブルームバーグ

FRBはパウエルさん。

出典:ブルームバーグ

この二人は金融マーケットという”連ドラ”の超重要人物です。ワンピースの4皇みたいなもので、この二人の言動で世界の金融マーケットが動きます。

・米国は強すぎるインフレを抑えたい。(つまりデフレにしたい)
・日本は長引くデフレを抜け出したい。(つまりインフレにしたい)

インフレ=物価が高くなること、デフレ=物価が低くなること 

今、日本は米国はこのように考えていて、それぞれの思惑から金利を上げ下げして調整しています。

つまり米国はブレーキを踏みたいわけで、そのために市中に出回るドルを減らしています。これを「金融引き締め」と言います。そのためにこの数年、米国金利を大きく上げてきました。

一方で日本は、バブル崩壊からデフレに苦しみました。これほど長くデフレが続くのも世界で日本だけなのですが、デフレから抜け出すために市中に出回る円を増やしました。これを「金融緩和」と言います。そのためにアベノミクスから金利を大きく下げてきました。

金利が上がると、住宅ローンの金利が上がったり、企業が借りてる融資の金利も上がったり、色々と経済活動を行う上でブレーキがかかります。

「来年からローン金利が上がります」と言われたら、みんな躊躇しますよね。一方で、「来年から金利が下がります」と言われたら、喜んで住宅ローンを組んだり融資を受けたりもあるでしょう。

つまり金利を上げ下げすることで、経済にアクセル/ブレーキをかけているのです。

為替の動向を読み解く方法

以上のことを考えると、これから日本は利上げする流れで、米国は利下げをする流れです。

つまり、日本は金利を上げる。米国は金利を下げる。事から考えると、やはり円高・ドル安の流れが考えられます。

第一弾でも書きましたが、秋の大統領選でトランプが勝ったら、米国はこれまでの円安ドル高によって製造業が大きなダメージを受けてますから、この層から支持があるトランプはドル安に持っていくはずです。

そうなれば、相対的に円高になりますし、何せ岸田総理のタイムリミットが近づいている中で、次の総理の椅子を巡って水面下でバチバチしているわけですが、今回の裏金問題で安倍派も二階派も解体させられたことから考えても、麻生派から出てくることが濃厚です。

だから先日、トランプと麻生さんは会ってたのかなと思います。バイデンからしたら気悪い話ですからね。

ですから、そうなると円高トレンドが始まります。利上げすると株価には良くないですから、私が日経平均が暴落するとしたら、このような金融マーケットの変化によると思います。答え合わせは今年の秋にしましょう。

まとめ

さて、まさか円安の話から始まって、第三弾まで書くとは思ってなかったですが、笑 でも金融マーケットを俯瞰して見る上でとても大切な事ですからね。

この”連ドラ”は登場人物も多くて、またいろんな歴史や思想、政治などもかなり密接に関係しています。だから面白いのですが、私はこうした金融マーケットはどんな映画やドラマ、ゲームよりも面白いと思っています。

演技や作り話ではなく、そこにある”リアル”は、どんなエンタメよりも興奮するし、それでいて実際に儲けることもできるし、反対に損するかもしれない。でもそれも含めて”リアル”です。

ハマったら抜け出せない”沼”みたいなものですが、でも人生はある意味暇つぶしですからね。一生相場は無くならないですし、沼る価値はあると思います。

では、一旦円安コラムは終了。また更新します。