自社株買いが増えている理由について徹底解説!

コラム

From:編集部 小早川

自社株買いは、企業が自社の株式を市場から買い戻す経営戦略の一つです。

通常、株式会社は資金調達のために株式を発行し、市場に流通させますが、自社株買いはこの流れとは逆の動きとなります。

企業が自己資金を使って市場に流通している自社の株式を購入することで、結果的に発行済み株式数を減少させる効果があります。

ではなぜ最近、自社株買いを行う企業が多いのでしょうか?

今回は自社株買いを行う理由についてわかりやすく解説します。

自社株買いを行う主な理由は4つ

自社株買いを行う主な理由は4つあります。

  • 株主への還元になる
  • 株価が上昇する可能性がある
  • 敵対的買収に備えられる
  • ストックオプションの原資確保になる

それぞれの理由について、わかりやすく解説をしますので、参考にしてください。

株主への還元になる

自社株買いは、配当とともに株主還元の施策です。

市場から株式を買い戻すことで、既存の株主の持分価値を相対的に高めることができるからです。

近年、日本は株主を重視した経営を行うようになり、株主への還元は非常に重要なテーマになっています。

株主還元と聞くと、配当を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、自社株にも大きな株主還元の効果があるのです。

株価が上昇する可能性がある

自社株買いは短期的に株価を押し上げる効果があります。

なぜなら、市場に出回る株数を少なくすることにより、1株当たりの利益(EPS)が向上しやすくなるからです。

自社株買いには中長期的にも株価上昇につながる可能性もあります。

自社株買いによって株価が上昇しやすくなる理由については、後ほど詳しく説明しますので参考にしてください。

敵対的買収に備えられる

市場に流通する株式数を減らすことで、他社による敵対的買収のリスクを低減できます。

敵対的買収は2000年に入るまではほとんど見られませんでしたが、村上ファンドの誕生により日本でも敵対的買収が見られるようになりました。

安定的な経営のために一定の株数を確保しておきたい経営陣の気持ちの表れだともいえるでしょう。

ストックオプションの原資確保になる

従業員向けのストックオプション制度の運用に必要な株式を確保する手段としても活用されます。

近年、日本企業の間で自社株買いを実施する動きが活発化しています。

2019年から2020年にかけては、NTTドコモやソフトバンクなどの大手企業が大規模な自社株買いを行い、投資家から大きな注目を集めました。

2024年に入ってからも、三菱東京UFJフィナンシャルグループやソニーグループ、リクルート、セブン&アイホールディングスなど名だたる企業が自社株買いを実施しています。

この背景には、コーポレートガバナンス・コードの改訂や、機関投資家からの圧力増大など、株主重視の経営姿勢が求められるようになったことが挙げられます。

自社株買いを行うことによって、株価が上昇する主な理由は3つ!

自社株買いが株価に与える影響については、一般的に株価上昇につながる可能性が高いと考えられています。

株価が上昇しやすくなる主な要因は3つです。

  • ROE(自己資本利益率)の向上
  • PER(株価収益率)の低下
  • PBR(株価純資産倍率)の低下

株価が上昇しやすくなる主な理由についてわかりやすく解説をします。

ROE(自己資本利益率)の向上

ROEは会社の資本に対してどれだけの収益を上げたかを示す重要な指標です。

計算式は「ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」となります。

例えば、ある企業の当期純利益が3億円、自己資本が12億円の場合、ROEは25%です。

一般的に、ROEが8%以上あれば収益性が高いと評価できます。

自社株買いを行うと自己資本が減少するため、分母が小さくなることでROEが向上します。

これにより、企業の収益性が高まったと評価され、投資家からの注目度が高まり、株価が上昇する可能性が高くなるのです。

PER(株価収益率)の低下

PERは株価に対する収益の割合を示す指標で、「PER = 株価 ÷ 1株あたりの利益」で計算されます。

例えば、ある企業の株価が2,000円、1株あたりの利益が200円の場合、PERは10倍です。

PERが低いほど、会社の収益に対して株価が割安であることを示します。

一般的に15倍以下だと割安と判断される傾向にあります。

自社株買いによって発行済み株式数が減少すると、1株当たりの利益が増加し、PERが低下します。

これにより、投資家にとって魅力的な投資先と見なされ、株価上昇につながる可能性が高まるのです。

PBR(株価純資産倍率)の低下

PBRは会社の純資産に対する株価の倍率を示す指標で、「PBR = 株価 ÷ 1株あたりの純資産」で計算されます。

例えば、ある企業の株価が2,000円、1株あたりの純資産が1,000円の場合、PBRは2倍です。

PBRが1倍を下回ると割安な株と判断されることが多いですが、実際に1倍を下回る企業は少ないのが現状です。

健全な経営を行い、できるだけ1倍に近づけることが望ましいとされています。

自社株買いによってPBRが低下すると、投資家から注目を集め、株価上昇につながる可能性が高まります。

まとめ

一昔前の日本企業は、株主還元にあまり積極的ではありませんでした。配当が低い企業も多く、自社株買いを実施している企業を少なかったのが現状です。しかし、よりグローバルな競争が強まり、世界の投資家から株式を買ってもらうためには、株主還元が欠かせません。自社株買いは配当と並びわかりやすい株主還元になるので、今後も実施する企業は多くなると予測されています。

株主だけのメリットではなく、敵対的買収に備えられることや、ストックオプションの確保など企業側にもメリットがあるため実施する企業が多いのでしょう。

ぜひ今回の記事を参考にしていただき、自社株会についての知識を深めていただければ幸いです。